五月になるといつも思い出すことがある。昭和40年ころにやっていたTVのシーンである。たぶん白黒ではなかったかと思う。タイトル名は「天国のお父ちゃんこんにちは」。下着の行商をする母親の森光子と松山省二・二木てるみ親子のホームドラマである。ドラマの中で必ず出てくるフレーズが二つあって、一つは「こんちわ~パンツ屋です~」そしてもう一つが次の詩である。
貧しいから
あなたにあげられるものといったら
爽やかなこの五月の風と
精いっぱい愛するこころだけです
でも結婚してくれますね
父ちゃんのプロポーズのことばである。高度経済成長期の一番いいころのドラマである。
ところで、今年の春は桜が早咲きだったもののその後低温がつづき桃や林檎の花はかなり遅咲きとなった。爽やかな五月も最近のことで前半はストーブが離せなかった。
農家を評するのに「鍬より重いペン」というのがある。農作業は過去の記録をもとに計画をたて、その年の天候に合わせて現実的修正を加えていくことが大切であるが、そのもととなる記録をとるのが苦手で記憶に頼っていることなどを指している。どんな仕事も記録し計画をたて現実的対応を行うことの繰り返しであるが、現実を忘れ計画に固執すれば結果は悲劇である。
やっと、遅い田植えが終わった。今年はどんな秋になるだろうか。百姓は毎年一年生である。
*TVの内容は記憶に頼っているので正確でないかもしれない。
※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません
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