2013.5.27
  「地域・集落の小さな拠点づくり」

                                総括支援アドバイザー兼教授 吉岡 正彦


 
 近年、とりわけ地方小都市や農村・中山間地域では、人口減少や住民の高齢化などにより、商店街や小学校などを核とした地域や集落の中心機能が衰退している。食料品や日用雑貨店の閉鎖や公共施設の統廃合ばかりでなく、病院やガソリンスタンドがなくなったり、あるいはバス路線も廃止されるなど、日常生活の維持そのものが厳しくなっている地域や集落は少なくない。
 このため、地域住民自らによる地域の再生やコミュニティの自立が叫ばれたりしているが、高齢者が多くかつ住戸が散在しているような地域では、簡単なことではない。そこで国などによる支援策が求められていたところだが、平成25年3月、国土交通省により「小さな拠点づくり」と称する支援施策を紹介するガイドブックが作成された。

 このガイドブックは、以上に紹介したような今日の地域社会の状況を踏まえ、小学校区などの集落が集まる地域において、買い物や医療・福祉など複数の生活サービスを歩いて動ける範囲に集めて、車が運転できないような高齢者などであっても一度に用事を済ませられる生活拠点をつくり、地域の生活サービスを維持していこうという取組みが書かれている。
このような「小さな拠点」づくりによって、地域内外の人々の交流が活発となり、新しい地域の活動や雇用が生まれ、集落地域の未来への展望を拓く役割も期待できるとしている。これに併せて、国が用意している支援メニューの一覧も公開されている(後記)。
 このガイドブックに紹介されている先進的な「小さな拠点」、全国11事例のなかには、筆者が以前、視察してみたい複合施設として本欄コラムで書いた、岡山県新見市哲西(てっさい)地域のきらめき広場・哲西も取り上げられている。このきらめき広場・哲西は、住民の居住圏域(東西6㎞・南北15㎞)のほぼ中心にあり、行政の主導により、庁舎、診療所(内科、歯科、薬局)、図書館、保健福祉センター、文化ホールなどを一体的に整備している。
 つまりは、公共サービスの複合化と集約化、すなわち地域住民が利用しやすいワンストップ化が実現している。(平成23年12月9日 付けコラム「集落における公共サービスのワンストップ化」、参照)

 もちろん福島県内においても、このような小さな拠点づくりを必要としている地域や集落は少なくないと思われる。
 筆者が2年前から係わっている伊達市が推進している「健幸都市づくり」においても、集落の拠点づくりを進めている。具体的にはモデルケースとして、霊山町掛田地区や梁川町白根地区において、住民の皆さんによるまちの拠点ゾーンづくりに向けたワークショップなどが行われ、この「小さな拠点づくり」の施策を先取りするような取り組みが進んでいる。
 もちろん伊達市のみならず、同様の問題・課題を抱えた自治体や地域では、今後、同じような試みが進められるであろう。

 いつまでも国が提示したモデルメニューに対して、自治体が手を挙げるというような時代ではないという見方もあろうが、直面している地域や集落の生き残りあるいは活性化を進めるために、役に立つ支援策は、大いに利用したい。
地域や集落の公共・公益的サービス機能を維持・強化させる有益な支援策のひとつとして、検討してみてはどうだろうか。

資料:「集落地域の大きな安心と希望をつなぐ小さな拠点づくりガイドブック」平成25 年3 月、国土交通省国土政策局集落地域における「小さな拠点」形成推進に関する検討会
http://www.mlit.go.jp/common/000992103.pdf
集落地域における「小さな拠点」づくりに係る国の関連施策一覧(平成25 年3 月現在)
(拠点施設、医療・福祉、買い物支援、農産漁村活性化など、各省庁のメニューを掲載している)
http://www.mlit.go.jp/common/000992625.pdf





※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません