2011年3月11日に発生した東日本大震災および東京電力福島第一原発の事故(以下では「震災等」と省略)を背景とした福島県民の地域的移動(転出・転入等)状況については、すでに2014年3月26日付の本欄コラム「震災後の福島県の人口変化」で取り上げたが、本稿は続編として、おもに県民の年齢構成の変化について取り上げてみたい。
なお、使用したデータは前回同様、住民基本台帳であるため、実際には原発事故による被災地域を中心に、住民票を移動しないまま地元市町村から転出している住民が少なくないと思われることは、最初に付記しておく。
(全県人口および年齢構成の変化)
近年における福島県の3年ごとの総人口と年齢構成の推移は、図1、表1に示すとおりである。2014年(各年とも3月1日現在)の総人口は194.3万人であり、「震災等」を契機に200万人の大台を下回った。「震災等」発生直前の2011年では、202.4万人であったので、この3年間で△80,987人、△4.00%減少した。
その年齢構成の変化を見てみると、2011年では、年少人口(0~14歳)27.4万人(全体の13.6%)、生産年齢人口(15~64歳)123.6万人(同61.4%)、老年人口(65歳以上)50.2万人(同25.0%)であったが、2014年には年少人口24.4万人(全体の12.6%)、生産年齢人口116.1万人(同60.1%)となり、年少人口は△30,010人(△10.94%)、生産年齢人口は△74,875人(△6.06%)と大きく減少している。
反面、老年人口は52.6万人(同27.2%)となり、23,898人(4.76%)増加している。この老年人口の増加は、県民の長寿化傾向に加えて、いわゆる団塊世代(昭和22~24年生まれ)が、おおむね65歳以上に到達した要因などが大きいと考えられる。
つまり、「震災等」を契機として、福島県人口の年齢構造は、年少人口が3万人減少した反面、高齢者が2.3万人増加して、急速に少子高齢化が進んだ。そして、県の活力を生み出す中心世代である生産年齢人口が7.5万人も減少した。このような少子高齢化の進展および生産年齢人口を中心とした総人口の減少は、今後、県の生産活動=経済力はもちろんのこと、都市サービスや福祉・教育分野などを担う労働力の確保や社会インフラ整備などの源泉となる税収にも、大きくマイナス要因として影響してくることが予想される。
図1 福島県の人口および年齢構成の変化

表1 福島県の人口および年齢構成の変化

(注1)割合は四捨五入のため総数と合わない場合がある。
(注2)年齢不明を除く(2011年に年齢不明人口数が大きく変化した)
資料:福島県「福島県の推計人口」(住民基本台帳、各年3月1日現在)により作成
(方部別人口および年齢構成の変化)
つぎに、近年3年間における人口数および年齢構成の変化を方部別にみてみると(図2、表2~表3)、減少数は、人口集積が大きい郡山市などを擁する県中△1.84万人(△3.33%)、福島市などを擁する県北△1.82万人(△3.67%)で大きく、この2方部で全体の約5割(45.1%)を占めている。次いで、管内人口が17.95万人と、48~53万人を擁する県中や県北と比べて、はるかに集積が小さい相双が△1.60万人の減少で3番目に位置している。この数字は人口32.7万人を擁するいわき市の△1.41万人の減少を上回っており、事故を起こした原発立地町を含む相双からの転出者がいかに多かったかがわかる。
これを変化率でみると、相双が管内人口の1割近い△8.19%減少で突出しており、南会津△5.54%、いわき△4.13%の減少が次いでいる。また、全体的な傾向としては、県北、県中あるいは相双、いわきにおいて、人口変動が大きかったことがわかる。
以上のような動きを、年齢構成の変化の視点から再整理すると、年少人口の減少傾向は全市町村にわたっている。減少数では、やはり県中△8.5千人(△11.02%)、県北△8.0千人(△12.15%)が大きいが、変化率では全県平均△10.94%と比較して、相双△16.56%の減少が群を抜いて目立っている。市町村別にみると、南相馬市△22.98%、広野町△22.82%などが大きく、子どもたちへの放射線被爆による影響を避けるために転出した状況が推定できる。
また、個別的には金山町△27.89%が目立っており、これは総人口が少ないことによる特異値と推定できるが、もともと年少人口数が少ない同町をはじめ柳津町、三島町、昭和村などの奥会津地域や南会津でのさらなる年少人口の減少傾向には、注意が必要といえる。
つぎに、△7.5万人ともっとも減少数が多かった生産年齢人口をみると、減少傾向は年少人口と同じく全市町村にわたっている。減少数では、やはり県中△1.85万人(△5.31%)、県北△1.75万人(△5.78%)が大きい。一方、変化率では、この年齢層でも相双△10.75%の減少がもっとも大きく、南会津△7.49%、いわき△6.24%が次いでいる。相双のなかでは浪江町△13.26%、双葉町△12.61%、南相馬市および富岡町△12.59%、川内町△10.09%が2桁の減少率となっており、子どもたちの避難とともにその親たちも転出(あるいは夫婦間での別居居住など)した動きが推定できる。また、会津のなかでは、やはり三島町△13.76%、金山町△12.82%、柳津町△12.25%、昭和村△11.62%のように、奥会津地域での減少率が大きい。
最後に、老年人口は、全県では2.39万人(4.76%)増加しているが、県中8.7千人(7.17%増)、県北7.3千人(5.87%増)など、中心都市を抱える方部での増加が顕著である。とくに人口規模が大きい郡山市6.4千人(9.41%増)、福島市5.1千人(7.49%増))が目立っており、このことは、逆に考えると、中心都市地域に集中するかたちで高齢者が増えていることになり、これらの都市では高齢者対策のいっそうの充実が求められる。
その他の市町村では、西郷村(12.25%増)、鏡石町(8.39%増)などで高齢化が進んでいるが、これまでおおむね人口増加基調にあったこれらの地域での高齢化率の上昇は、県全体で高齢化の「底上げ」が進んでいるサインとみることもできる。加えて、老年人口が減少した地域として、昭和村△6.31%、金山町△5.23%など、中山間地域を中心に県内に20町村もあることから、同時に県全体で高齢化傾向が成熟化しつつあるとも表現できよう。
図2 近年3年間(平成26/23年)における方部別・年齢構成別人口の増減数・増減率

表2 近年3年間(平成26/23年)における方部別・年齢構成別人口の増減数・増減率

(注)および資料は表1に同じ
(まとめ)
人口の地域的移動状況を踏まえたまとめは前回コラムに書いたが、年齢構成の変化の視点からは、とりわけ相双では、親子世代を中心に原発事故による被爆からの避難(転出)の動きが顕著なことから、今後は復旧・復興(帰還)を想定するならば、とくに年少人口と生産年齢人口を中心とした人口回復策が求められる。また、郡山市、福島市といった中心都市で、とりわけ高齢者の増加数が多いことから、一層の高齢者を意識した都市環境整備が求められる。
そして、奥会津地域や南会津を中心に老年人口も減少する動きがみられており、県全体に高齢社会の成熟化傾向がみられている。つまりは、これまで慣用句のように使われてきた子どもが減り高齢者が増加する「少子高齢化の進展」から、今後は高齢者も減少する「全年齢層にわたる人口減少時代」に突入していくことが予測されるため、これらの動向を踏まえたより積極的な人口対策が求められる。
図3 近年3年間(平成26/23年)における市町村別・年齢構成別人口の増減率


(注)および資料は表1に同じ
表3 近年3年間(平成26/23年)における市町村別・年齢構成別人口の増減数・増減率

(注)および資料は表1に同じ
※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません
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