「道の駅」は、平成5年4月に全国で103カ所設置されてから徐々に登録数を伸ばし、平成27年4月15日現在で1,059カ所となっている(※1)。
国土交通省(制度開始時は建設省)により登録された休憩施設と地域振興施設が一体となった道路施設で、「休憩機能」、「情報発信機能」、および、道の駅を核としてその地域の町同士が連携する「地域連携機能」という3つの機能を併せ持つ(※2)。
「道の駅」の目的、機能、基本コンセプト
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(※2;国土交通省道路局HP「道の駅案内(概要)」より抜粋
出所;http://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html
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モータリゼーションの進展で移動手段としての自動車の需要が飛躍的に伸びたことにより、一般道路においても高速道路のSA・PAのように誰もが24時間自由に利用できる休憩施設が求められるようになったことが創設された背景にある。
また、道の駅は幹線道路沿いの公共施設でもあることから、近年、災害時の活用についても注目されていて、「道の駅の施設を避難所として活用する」、「復旧支援活動の拠点とする」などの活用もされている(※3)。
福島県においても、県と「道の駅」連絡会との間で防災総合利用に関する協定を締結、災害発生時には「道の駅」施設の提供や物資の提供など、迅速かつ適確な応急対策等を実施するための取り決めがなされている(※4)。
近年では、「道の駅」は単なる休憩施設としての枠を超えて、地元特産品の直売や高齢者の買い物支援サービスなどを行う拠点として特色ある駅が増え、地方の雇用創出や経済効果への期待が高まっており、国が掲げる「地方創生」の核として注目されている。
以上のことから、当コラムでは、地域振興の「核」として期待を集めている「道の駅」に着目、昨今の話題をいくつか紹介し今後の可能性について考えてみたい。
1 重点「道の駅」等の選定~地方創生の核となる「道の駅」を重点的に応援~
国土交通省は、全国の「道の駅」の中から地域活性化の拠点として、特に優れた機能を継続的に発揮していると認められる「全国モデル道の駅」を6カ所、地域活性化の拠点となる優れた企画があり今後の重点支援で効果的な取組が期待できる「重点道の駅」を35カ所、地域活性化の拠点となる企画の具体化に向け、地域での意欲的な取組が期待できる「重点道の駅候補」を49か所選定した(※5)(平成27年1月30日報道発表)。
福島県内では、『道の駅「(仮称)いなわしろ」(猪苗代町)』が、【雪・火山に対応した総合防災拠点】として、「重点道の駅」に選定された(平成28年開業予定)(※6)。
重点「道の駅」選定箇所(全国モデル「道の駅」、重点「道の駅」)
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(※5;国土交通省道路局報道発表資料「重点「道の駅」の選定について」より抜粋)
出所;http://www.mlit.go.jp/common/001067711.pdf
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(※5;国土交通省道路局報道発表資料「重点「道の駅」の選定について」より抜粋)
出所;http://www.mlit.go.jp/common/001067711.pdf
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以下、特に優れた施設として選定された「全国モデル道の駅」を紹介する(※5)。
【全国モデル道の駅】
①「川場田園プラザ」(群馬県川場村) (http://www.denenplaza.co.jp/)
「農業プラス観光」で自立する群馬県川場村の産業、情報、交流の核として人気。農産物や観光名所など、豊富な地域資源へのアクセスポイントとして、「道の駅」を目的地とする新たなニーズを掘り起こし、人口約3700人の村で、利用者数約120万人(リピーターが7割)を誘致。駅での販売(約10億円)、雇用創出(80名)に加え、ファーマーズマーケットの出荷登録(420名:村内農家の93%)などを通じて経済・地域活性化の効果は、地域に広く波及。

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(※5;国土交通省道路局報道発表資料「重点「道の駅」の選定について」より抜粋)
出所;http://www.mlit.go.jp/common/001067712.pdf
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②「もてぎ」(栃木県茂木町) (http://www.motegiplaza.com/index.html)
柚子、エゴマ等の特産品を加工する「もてぎ手づくり工房」を整備し、「道の駅」を核とした6次産業化を推進。「道の駅」が、農産物の生産指導から全量買取、33種類のオリジナル商品を開発、販売まで実施。地域ならではの地場産品の提供、真岡鉄道のSLやサーキットなど地域の魅力へのアクセスポイントとして、地域センター機能とゲートウェイ機能を兼ねるにぎわいの核として定着。既往災害(昭和61年洪水)の教訓から、地域に根差した防災啓発のために茂木町防災館を備え防災井戸を設置。

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(※5;国土交通省道路局報道発表資料「重点「道の駅」の選定について」より抜粋)
出所;http://www.mlit.go.jp/common/001067712.pdf
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③「とみうら」(千葉県南房総市) (http://www.biwakurabu.jp/)
地域特産のビワを道の駅が中心となり、加工、オリジナル商品を開発(ビワ関連商品50種類)。従来の規格外品の活用や需要安定により生産農家の経営安定に貢献。ビワ狩りや体験企画、菜の花など、地域の観光資源をパッケージ化し、都市部の旅行会社へ販売、観光バス3000台を誘致するとともに、地域の100事業者に効果が波及。人形浄瑠璃などの地域文化の発信や、地元産野菜・花卉のマルシェ、観光案内人の常駐、非常用電源などの防災設備など、地域の拠点として多様な機能を発揮。

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(※5;国土交通省道路局報道発表資料「重点「道の駅」の選定について」より抜粋)
出所;http://www.mlit.go.jp/common/001067712.pdf
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④「萩しーまーと」(山口県萩市) (http://seamart.axis.or.jp/)
隣接の魚港で水揚げされた海産物が直接店頭に並ぶ新鮮さを特長に、地元のニーズにこたえる「道の駅」を展開。売り場面積1m2あたりの売上高は、一般的なスーパーの約2倍。約100名の雇用を創出。値も付いてなかった魚を加工品として商品化する「萩の地魚もったいないプロジェクト」を推進し、漁業者の所得向上に寄与。

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(※5;国土交通省道路局報道発表資料「重点「道の駅」の選定について」より抜粋)
出所;http://www.mlit.go.jp/common/001067712.pdf
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⑤「内子フレッシュパークからり」(愛媛県内子町) (http://www.karari.jp/)
地元農家の女性達が中心となり、販売額は約7億円、町の農産生産額の15%を占め、新たに58名の雇用を創出。運営も生産者自らが手作りで、商品開発、品質管理、イベント企画運営までを実施。特に、商品開発は、女性で構成される複数のチームで独自商品を開発するなど、女性主役の運営も特長。出荷農家は、当初から約2倍に(176人→394人)。販売管理システムやトレーサビリティを導入し、16年間で利用者は6倍、販売額は8倍に増加。

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(※5;国土交通省道路局報道発表資料「重点「道の駅」の選定について」より抜粋)
出所;http://www.mlit.go.jp/common/001067712.pdf
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⑥「遠野風の丘」(岩手県遠野市) (http://kazenooka.tonofurusato.jp/)
東日本震災時には、自衛隊・救急隊の支援拠点として機能を発揮。これを受けて、岩手県広域防災拠点配置計画の広域防災拠点に位置づけられ、ベースキャンプ、備蓄等の高度な防災機能を分担。復興に向け、沿岸被災地の海産物の販売所を新設、岩手県内「道の駅」の共通販売商品を開発。スタッフが常駐する観光案内所は、沿岸地域の復興情報、観光情報に加え、ふるさと納税や移住促進にも活用。

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(※5;国土交通省道路局報道発表資料「重点「道の駅」の選定について」より抜粋)
出所;http://www.mlit.go.jp/common/001067712.pdf
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2 「道の駅」と大学の連携~若者との交流により新たな価値を創出~
地域づくりを学ぶ学生の就労体験の場としての「道の駅」の活用について、全国「道の駅」連絡会と42大学との間で協定を締結。将来の地域活性化の担い手となる人材育成、若者ならではの視点を活かした地域づくり、地域外の若者との交流による「道の駅」の新たな価値の創造等の効果が期待されている。
具体的には、観光や地域づくりを学ぶ学生が、夏期休暇を利用し「道の駅」で就労体験型実習(インターンシップ)を実施。地域の魅力の集まる「道の駅」と、観光学等を学ぶ地域外の若者が交流することで、新たな価値の創造を図るねらいがある。
福島県内では、就労体験型受入「道の駅」として、「羽鳥湖高原(天栄村)」、「ばんだい(磐梯町)」、「会津柳津(柳津町)」、「からむし織の里しょうわ(昭和村)」、「あいづ 湯川・会津坂下(会津坂下町・湯川村)」の5施設が挙がっている(※7)(平成27年4月27日時点)。

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(※7;国土交通省道路局HP掲載 報道発表資料「「道の駅」と大学の連携~若者との交流により新たな価値を創出します~」より抜粋) 出所;http://www.mlit.go.jp/common/001088395.pdf
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3 「道の駅」63カ所を外国人観光案内所として新たに認定
訪日外国人旅行者の受入環境整備の一環として、全国の「道の駅」を対象に、新たに63件の「外国人観光案内所」新規認定が行われた。これまでの空港やターミナル駅、その周辺等に立地する認定案内所等に加え、新たに「道の駅」が数多く認定されたことにより、様々な旅行スタイルに対応した受入体制の整備が進むことが期待されている。
福島県内では、地域の観光案内を提供する施設として「あいづ 湯川・会津坂下(会津坂下町・湯川村)」が認定された(※8)(平成27年3月31日報道発表)。
4 「道の駅久米の里」に太陽光パネルを設置
岡山県津山市は、再生可能エネルギーの普及と地域の活性化を目的に、クラウドファンディングを活用した「市民協働発電所事業」を開始した。津山市で環境活動に取り組んできた団体等が設立した「一般社団法人つやま市民協働発電所」が統括管理を行う発電所事業に対し、市有施設の屋根等を無償で提供する(事業主体は合同会社津山さくら発電所)。「道の駅久米の里」には、太陽光パネル(10kW)を設置し、平成27年4月に稼働した(※9)。
5 道の駅を町歩き拠点に、帝京大と国交省が連携
城下町の風情を残す群馬県甘楽町への観光客を増やそうと、「道の駅甘楽」(甘楽町小幡)と帝京大学(東京都)、国土交通省関東地方整備局の3者による連携企画型の実習が行われる。
この取り組みは、将来の地域活性化の担い手となる人材を育成・確保するとともに、「道の駅」が地域活性化の拠点を目指して進化を遂げるため、「道の駅」と大学がお互いのニーズを確認し、付加価値を創出する企画・立案等を実施するもので、道の駅と帝京大が連携し、歩きたくなる城下町小幡の実現に向けた観光メニューを企画する。
具体的には、道の駅をまち歩きの玄関口として位置づけ、「まち歩き体験プログラムづくり」と「まち歩きフードメニューの開発」に取り組むとのこと(※10)。
このように、「道の駅」は「多角的地域振興拠点+交流拠点」として、今後ますます発展する可能性を秘めていている。特に、学生を招き就労体験の場とするなど、設立当初は想定もしえなかったのではないか。
現在の代表的なスタイルは「休憩所(トイレ、食堂)+農産物・特産物等の直売所」であるが、「地産地消レストランの併設」、「商品開発の拠点(加工場)整備」、「イベント開催会場」など複合化が進み、子育て中の母親らが気軽に立ち寄れる「ママカフェ」や高齢者が集える施設、コミュニティバスの待合所などが増えていけば、道の駅を核としたコンパクトシティーのモデル地域があらわれるだろう。
中山間地域で人口減少に伴う地域再生策を模索する中、今後、「道の駅」を活かす取り組みがキーとなり、元気な地域が増えることを願いたい。
<参考、紹介記事の出所>
(※1)「道の駅案内」(国土交通省道路局HP)
http://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/history.html
(※2)「道の駅案内(概要)」(国土交通省道路局HP)
http://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html
(※3)「「道の駅」の災害時における活用について」(国土交通省道路局国道・防災課「道路行政セミナー2009.3)
https://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/2008_data/0903/0903tokushu-michinoeki.pdf
(※4)「福島県が締結している災害時における応援協定」(福島県災害対策課HP)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16025b/saigaikyotei.html
(※5)「重点「道の駅」の選定について」(国土交通省道路局HP報道発表資料)
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000472.html
http://www.mlit.go.jp/common/001067711.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001067712.pdf
(※6)「道の駅案内
「重点道の駅」」(国土交通省道路局HP)
http://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/juten_eki/model02.html
(※7)「「道の駅」と大学の連携~若者との交流により新たな価値を創出します~」(国土交通省道路局HP報道発表資料)
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000504.html
http://www.mlit.go.jp/common/001088395.pdf
(※8)「全国の「道の駅」63か所を外国人観光案内所として新たに認定」(日本政府観光局JNTO報道発表資料)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/20150331_2.pdf
(※9)「つやま市民協働発電所事業の紹介」(津山市役所HP)
https://www.city.tsuyama.lg.jp/life/index2.php?id=4297
(※10)「~道の駅「甘楽」と帝京大学との連携~歩きたくなる城下町小幡の実現に向けて連携企画します。」(国土交通省関東地方整備局HP記者発表資料)
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000622218.pdf
※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません
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