2015年10月31日、郡山市商工会議所で行われた福島県主催による「ふくしま・まちづくり若者発表会」に、コーディネーターとして参加した。
この発表会は、商工労働部商業まちづくり課による「ふくしまの子・ふるさとの商店街プロデュース事業」、こども未来局こども・青少年政策課による「チャレンジふくしま若者リーダーまちづくり事業」および文化スポーツ局生涯学習課による「子どもたちによるふるさと『ふくしま』の学び事業」の3つの事業を併せた発表会であった。
「ふくしまの子・ふるさとの商店街プロデュース事業」は、県内の商店街の賑わい不足と、子どもたちの商店街へ足を運ぶ機会の減少を踏まえて、「子どもたちのアイデアを通じた商店街の賑わいづくり」と「商店街の賑わい創出を通したまちづくりへの理解・参画」を目的とした事業である。
会場では、会津と浜通りの2つのグループの小学生たちから商店街ににぎわいを取り戻す方法を考えた発表があった。
「チャレンジふくしま若者リーダーまちづくり事業」は、若者が社会と関わり、自らまちづくりについて考えることを目的として、2015年6月から、県内の若者たちが、浜通り、中通り、会津地方の3つのグループに分かれて、「福島でみんなで活き活きと暮らせるまちづくり」をメインテーマに、若者ならではの感性でアイデアを出し合い、町を元気にする企画案を立ててきた。このキックオフ・ミーティングの様子については、以前、本欄コラムに書いたことがある。(注)
今回はその成果として、3つのグループの大学生、若手社会人の皆さんから「まちづくり企画」(案)の発表があった。
また、パネル展示として、「子どもたちによるふるさと『ふくしま』の学び事業」の発表があった。
この事業では、県内の小中高校生たちが、復興に向けた地域の現状、ふるさとの良さや夢・希望について、福島にゆかりのある方々に対してインタビューなどを実施した。ふくしまの未来について考え、自分のことばで表現することにより、ふくしまの今・未来を発信するとともに、ふくしまの復興を担う子どもたちを育てることを目的としている。
会場には、小中高校生たちがジャーナリストの池上彰さんらから学んだ「ジャーナリストスクール」での勉強を踏まえて、会津若松市に避難している大熊町や楢葉町の皆さんらにインタビューした内容をまとめた新聞などが、多数掲示されていた。
今回の大震災と原発事故に直面した福島を元気にしようという統一テーマのもとに、こうした県庁関係各課を横断するかたちで若者たちによる発表会が企画されたことはあまり記憶になく、とても好感が持てた。
(ふくしまの子・ふるさとの商店街プロデュース事業の発表)
最初に行われた会津グループの小学生や指導した大人たちからは、商店街に「ゆったり、まったりできるスペースがない」「空き店舗が減ると良い」といった子どもたちの意見をもとに、会津若松市本町(もとまち)商店街の歴史や店の特徴を盛り込んだわかりやすいイラスト地図をつくって配布したとの発表があった。
また、10月17日(土)から11月28日(土)までの期間、商店街のにぎわいづくりのために、空き店舗を活用してカフェ(兼コミュニティスペース)を営業しているという。このカフェは本町商店街にあり、街のにぎわいを取り戻す意味で「カフェよみがえる」と名付けられ、手作りのカエルの形をしたニット帽をかぶったかわいい小学生たちらが店員となって営業している。毎週金・土曜日の営業で、その他の月~木曜日は子どもたちが自由に集まることができる場として開放されている。
また、浜通りグループのメンバーからは、商店街のイベントや地域間交流がもたらす経済的な効果などについて学びながら、賑わいを取り戻すための取組みを考えているとの発表があった。
震災をきっかけとして交流ができた南会津町や南相馬市内でとれた農産物が、同市原町区の栄町商店街に新しくできた農産物直売所である「やさいの森」を支えていることなどを学ぶなかで、これから自分たちで新商品を開発したいとの意気込みが表明された。
是非とも頑張って実現して欲しいと願うとともに、福島の将来をになうキッズ・パワーによる元気な発表を聞いて、頼もしく感じた。

※撮影:福島県こども・青少年政策課
(チャレンジふくしま若者リーダーまちづくり事業の発表)
つづいて、大学生、若手社会人の計24名の代表から、浜通り、中通り、会津地方の3つのグループ別に発表があった。
○浜通りグループ
浜通りグループからは、浜通りに複数の店舗(さらに開店予定店舗もある)があるスーパーのイオンとの提携などにより情報発信を行い、人を介して浜通りの魅力を伝えてファンをつくりたいとの発表があった。
浜通りは原発事故の影響が大きく、地域が分断されるとともに風評被害もいまだに根強くある。しかし、このような状況だからこそ、改めて地域の魅力を知ってもらいたい、人を介して浜通りの魅力を伝えファンをつくりたいとのことだ。
具体的には、浜通りの未来を担う子供たちにメッセージを送り、これからの浜通りの復興とさらなる発展を目的として、(1)イオンとの提携による情報発信、(2)食育、実演・講演、イベントの開催、(3)学生とのコラボによる情報発信、の3つのプロジェクトの実現に向けた提案があった。
○中通りグループ
中通りグループからは、郡山市に食・農を軸とした滞在・体験型の道の駅をつくりたいとの発表があった。
若者に農業や地元に興味をもってもらうきっかけづくりを行い、担い手不足の解消、地元での就職促進をめざすとともに、郡山産の素材を生かした食や農によるディズニーランドのような一大テーマパークをつくりたいというスケールの大きな提案だ。具体化に向けて、これから関係者や団体と詰める予定とのことだ。
○会津グループ
最後に、会津グループからは、「会津電脳都市化計画によるまちづくり」をめざす第一歩として、「まちなかソフトウエア・レイヤー」の事業化が提案された。これは興味あるものや施設の案内表示などにスマホをかざすと、関係する情報や映像が得られるというサービスだ。
たとえば会津若松市にある飯盛山でスマホのカメラを通して若松城方面を見ると、戊辰戦争時に、若松城(鶴ヶ城)が炎上している合成映像が、画面上に現れるというわけだ。会場では、実際に白虎隊の青少年たちが見たと思われる景観を合成して動画で見せてくれたので、とてもわかりやすいプレゼンであった。歴史的な観光資源が多数ある会津若松市などでは、観光振興効果もずいぶんと大きいに違いない。
さらに、第2弾、第3弾としての企画を市内のIT企業などと組むことで実現し、最終目標としては、会津若松市に集うすべての人が主人公になる「電脳都市」のまちづくりを実現したいとのことだ。
以上、当日の発表の様子を簡単に紹介したが、この事業が工夫されているところは、よくありがちなまちづくりに関するアイデアや企画の提案に終わることなく、この後、まちづくり実践会議というアイデアや企画を詰めるプロセスがあり、実現に向けて関係する企業や団体に働きかけるとのことだ。
また、立場や年代が異なる社会人と学生のコラボによる討議が行われたことで、新しい人脈や人間関係ができるとともに、それぞれにお互いが学びあう効果も大きかったのではなかろうか。
こうした若い力の結集により、福島が一日も早く元気に復活し、さらに発展していくことを願わずにはいられない。
(注) 吉岡正彦「チャレンジふくしま若者リーダーまちづくり事業に参加して」(本欄コラム、2015年7月1日)
http://www.f-jichiken.or.jp/column/215/yosioka215.html
(参考文献)
チャレンジふくしま若者リーダーまちづくり事業 - ふくラボ!
http://www.fukulabo.net/is.shtml/challenge-fukushima/
※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません
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