2016.6.22
  「小1の壁を乗り越える」

                                       主幹  菅野 昭広


 小さい子供を持つ共働き夫婦にとっては、「無事保育園を卒園して小学生ともなればひと安心」とはならず、その先に「小1の壁」と呼ばれる大きな障壁が待ち構えている。 昔からいわゆる“かぎっ子”と呼ばれる子供はいたが、実際に小学1年生の子供が1人で親が帰ってくるまで留守番するというのは難しいことであろう。そうなれば、祖父母や面倒を見てくれる大人が近所などにいない場合、“放課後児童クラブ(学童保育)”に預けることとなる。 しかし、首尾よく学童保育に預けることができても、ほとんどは18時ごろまでにお迎えに行かないといけないので、保育園に通わせていた時より働く親(特に母親)にとってはハードルが高くなる(場合によっては仕事を辞める、職場を変えるなどの対応をせざるを得ないケースも出てくる)。


 厚生労働省が平成27年12月18日に発表した資料によると、共働き家庭の小学生を放課後に預かる放課後児童クラブ(学童保育)について、利用できなかった待機児童が平成27年5月1日時点で16,941人(前年同期比6,996人増)いたとしている。同省はこれまで利用対象者を「主に10歳未満」と定めていたが、平成27年度から6年生までに拡大。申込数が大きく伸びたことが、増加の要因とみられる。
 また、平成27年4月から始まった子ども・子育て支援新制度が呼び水となって潜在的な待機児童の申し込みが増えたこと、景気回復で女性の就業率が上がったことも、待機数を押し上げたという。学童保育をめぐっては、子どもが小学校に入ると放課後の預け先がなくなって母親が離職に追い込まれる「小1の壁」の解消が喫緊の課題となっていて、同省は、平成26年7月に文部科学省と共同で策定した「放課後子ども総合プラン」に基づき、平成31年度までに約30万人分を新たに整備することとしている(※1、2)。


 このように、全国的には学童保育を利用したくとも利用できない家庭が多くある中、我が家は幸運であった。我が家は共働き家庭だが、祖父母が自宅にいることもあり、次男が小学校に入学した際に学童保育への申込みは行わずに1年間学校に通わせてみた。
 しかし、通常通りの授業がある時期はともかく、特に夏休みや冬休みの長期休暇期間にどのように過ごさせるか(遊び、勉強などなど)悩んだ1年間でもあった。
 そのような中、偶然にも、学校から近く、妻の実家にも近い場所に民間の学童保育所がオープンするとの情報が飛び込み、この春から次男は学童デビューを果たした。
 最初のころは遊び疲れて、家では食事もとらずに寝てしまうこともあったが、約1か月がたち、それなりに学童生活を楽しんでいる様子である。特に、勉強(学校の宿題が中心)も友達と一緒にやる時間があり、いわゆる“競争心”が芽生え始めたのか、以前より明らかにやる気を出しているようで、うれしい限りである。
 また、これから迎える夏休み期間中なども、学童で半日程度は過ごせるようであり、家の中で一人だけで過ごすよりもメリハリのある生活を送ってもらえそうで、親としては大変ありがたい限りである。


 最近「イクボス」といった言葉も使われるようになり、子育て中の共働き夫婦への理解を示す人も徐々に増えてきて子育て環境も改善されているように思われるが、自分も含めてはたして実際はどうだろうか。“仕事が忙しい”、“疲れている”、“やることがある”などと言って子供と過ごす時間を大事にせず、日々過ごしてしまっているような気がする。
 子供はあっという間に成長していく。小学校高学年ともなれば親と一緒に出掛けるのを恥ずかしがる年頃になるだろう。そう考えると、学童に通わせて安心するのではなく、もっと子供と過ごす時間を持たなくてはいけないと近頃思い始めている。
 次男はまだキャンプに連れて行っていないので、今年はぜひ連れて行って、“おとこ同士”の貴重な時間を楽しんでみたいと思うこのごろである。


参考文献:
※1 厚生労働省発表資料「平成27年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(5月1日現在)」「2015年12月18日報道発表」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000107366.html
※2 2015年12月18日 時事通信社iJAMP記事「学童保育、1万6941人が待機=小6まで拡大で増加―厚労省」より、一部抜粋し引用

このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません