2017.3.29
  「空き家対策の行く末は」

                                       主幹  菅野 昭広


 昨今、「空き家」が社会問題として大きくクローズアップされている。
 平成25年の全国の空き家率は13.5%、空き家数は820万戸となっており、いずれも過去最高を更新している(※1)。しかし、「空き家」と言っても、売却・賃貸用の住宅、二次的住宅(いわゆる別荘など)は、さほど問題視されていない。
 問題視されているのは「その他の空き家」(空き家になったにもかかわらず、買い手や借り手を探しているわけでもない、別荘でもない、いわゆる放置物件)である。このような空き家の所有者の中には、「親の家を相続したが住む予定はない」、「盆や正月に帰省する際には使う、仏壇があるのでそのままにしている」などを理由に挙げ放置している人が多く、十分な維持管理が行き届いていない(あるいは人の目が余り行き届かない)物件が全国各地で増加している。
 筆者自身も約10年前に親との同居を決断した際、親が住んでいた家をどうするのか(売るのか、しばらく放置するのか、すぐに解体するのか・・・)悩んだ経験がある。幸いにも立地が良かったことからすぐに買い手が見つかり売却をすることができたが、そのまま放置をするようなことになっていれば「火事や崩壊により隣家に迷惑をかけはしないか、動物などの住処になってしまわないか、・・・」と、不安や悩みを抱えていたに違いない。空き家問題は他人ごとではないのである。

 日本の住宅市場では、戦後の高度経済成長と歩調を合わせるように「新築住宅シェア」が大きく伸び、欧米のような「古くても、手入れをしながら長く使う、資産として受け継いでいく」という中古住宅を利用するニーズは少数派であった。この背景には「核家族化の進行」、「少子高齢化」が大きく影響しているようにおもう。

 福島県においても「空き家」は大きな社会問題となっている。このような情勢を踏まえ、センターでは、県内自治体が今後空き家対策を進めていくうえで参考となるような先進的・特徴的な事例(対策)について調査し、情報として取りまとめて提供する事業(テーマ;空き家対策の事例研究)に取り組んだ(※2)。
 全国各地の情報収集に当たった結果、「空き家対策」は単なる「空き家を解体し更地にする」、「空き家をリフォームし活用する」だけの取り組みではなく、「少子高齢化対策」、「移住・定住対策」、「まちづくり・まちおこし策」、「中心市街地活性化策」など多くの地域課題解決策・地域振興策と密接な関係にある複合的な政策課題であると感じた。
 空家等対策の推進に関する特別措置法が完全施行された今、多くの自治体が「空き家バンク」を創設するなど、空き家の流動化に努めている。
 しかし、自治体が扱うこととなる空き家は、いわゆる民間ベースでは流通しない物件(相続などの問題を抱えている、老朽化が著しく資産価値が低いなど)が中心とならざるを得ず、その対応は極めて難しいと言われている。
 そこで、空き家バンクを自治体各々で運営するのではなく、横の連携(自治体間連携、自治体と民間との連携、協力)を模索する動きが活発化している。この流れは、空き家所有者側の問題解決を促進する効果はもとより、空き家を探す側(おもに移住・定住などの目的で物件を探している人々)にとっても、大きなメリットがあると考えられる。
 たとえば、ネット上で空き家バンクを個別に検索し、問い合わせ、実際に物件の確認を行うよりは、“横の連携”が取れている(複数の自治体の空き家バンクを一度に検索し比較できる、問い合わせ窓口が統一されているなど)場合の方が、探す側にとっても手間をかけずに有益な情報を取得できるメリットがある、また、情報を提供する側にとっても、横の連携を深めることにより、地域全体として問題を解決する方向へ向かうことができるメリットがある。よって、空き家バンクをとってみても、単なる「物件紹介」から、一歩進んだ「人と人と、地域と地域とのコミュニケーション」へと取り組みが進化している。
 また、市街化調整区域における特例を設ける自治体も出始めている(※3)。
 空き家対策は、「空き家をどうするか」というミクロな視点から、「空き家を含む、地域・人々の暮らし、生活スタイルをどうするか」というマクロな視点に変わってきているのではないか。

 今後は、戸建て住宅の空き家だけでなく、「老朽化マンション」の空室化、賃貸化が大きな社会問題に発展していくと言われている。
 よって、空き家を増やさないように事前の処置を施していくことがまずは重要ではあるが、新築住宅も空き家も増え続ける状況がどんどん進行していけば、国が進めるコンパクトシティの実現も難しくなるであろう。「空き家」も「人々の生活スタイル」もコンバージョン(用途転換、改造)が必要な時期に来ている。
 では、このような状況を打破し、より望ましい方向へ向かうためには何が必要なのか。今回の調査は情報提供が目的であり、解決策を求めるものではなかったが、近年、様々な有識者・研究者などの間で地方創生、田園回帰などが声高に叫ばれ、地方の魅力に気づき、地方にUIJターンをする若者が増えている。これらの動きと「空き家対策」を連動させることにより、地方の良さが見直され、都市から地方への人の流れが加速し、都市と地方の適正な人口バランス(数、構成ともに)が実現されれば、国全体の人口総数は減っても、一段階成長(成熟)した国として成り立ってはいかないか。

 最後は空き家問題から脱線してしまったが、空き家対策の事例を調査する取り組みの中で、このようなことを考えた1年間であった。

引用資料出所:
※1 総務省「平成25年住宅・土地統計調査」
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
※2 ふくしま自治研修センター平成28年度情報提供事業「空き家対策の事例研究」
http://www.f-jichiken.or.jp/tyousa-kenkyuu/seisaku_shien.html
※3 福岡市「市街化調整区域で住むこと」
http://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/chiikikeikaku/chikeihp/topics/shigaikachouseikuiki_leaflet.html



このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません