2016.8.24
  「中山間地域は日本の宝」

                                             教授 国分 敏明


 我が家の楽しみの一つに、ロングドライブがある。行きたいところと宿泊先を決めて後は気ままに楽しむスタイルである。おおよそ無計画に近いかも知れない。
 ナナカマドの赤が輝く山岳地帯やまばゆい新緑と光のハーモニーを求めて、湿地や草原の草花を求めて、いで湯を求めて、はたまた渓流や清流、神社・仏閣・お城、さらには、蕎麦や郷土色豊かな食材とその料理を求めてなどなど、気分次第である。

 ロングドライブ中の風景も様々である。どこも同じような街中や駅前風景、他とは趣の異なる城下町や門前町、宿場町の風情、山肌の急斜面に張り付くように立ち並ぶ茅葺きやトタン屋根の古民家、平家落人伝説を思わせる山奥の谷間の部落、棚田や茶畑、ブドウ畑、土地区画整理された田園風景、険しい山並みや風光明媚な海岸線などなどである。

 いつも交わす会話は、「うわぁ~きれい」、「ここの料理はおいしいね」、・・・加えて、山間を走っているときの、「よくここで生活できるよね。平家の落人部落なのかな。生活物資の確保、病院、各種手続きなどどうしているんだろう。たぶん自給自足の生活だよね。我が家は半径500メートル以内に市役所の支所、消防署、交番、銀行、郵便局、コンビニエンス、スーパー、病院、駅、ガソリンスタンド、床屋などがあり、ここに比べたら都会に住んでいるんだね。」と。なにか後ろめたい気持ちにもなる。

 山間地域を走行していて共通して目にするのは、少ない耕地での米作と草が生い茂った耕作放棄地、そして、人が住んでいないであろう民家である。生活の豊かさや報酬と職を求めて一極集中と化した我が国において、そして大規模農業を是とした政策の狭間で中山間地域の現状を目の当たりにする光景がどこへ行っても見かける。

 もともと平野の少ない日本においては、この中山間地域は国土の約7割、農家戸数の約4割、耕地面積の約4割を占めている。決して無視できない重要な位置づけにあるはずである。「どうにかならないか」といつも脳裏にこびり付いて離れない。
 頭を過ぎるのは、二本松市(東和町)の『ななくさ農園』である。高齢化、過疎化も進む山間地域は平場とは違って生産効率も悪いが、見方を変えれば何でも育つ生態系の豊かさがあるとの視点で、単一品種に特化しない、風土に根ざした多品種少量生産にシフトし、自給自足をベースとした家族農業の可能性を追求している農家である。

 仮に、同様な農園が東和町、二本松市、福島県の中山間地域の小規模農家の主流となり、集荷場に集約(郵便事業との契約などで)できるとすれば、マスとして一大生産地となる。しかも新鮮で安全で多品種である。塵も積もれば何とやらである。

 やがて、キノコや山菜、地鶏や鶏の飼育、段々畑などを利用した魚の養殖(ヤマメやイワナなどに加えて今やトラフグやマグロだって山間地域で養殖することが可能になっている。)を含めて多品種のバリエーションはどんどん広がる。中山間地域の農業はお荷物から日本を救う食材の宝庫群となり得る。多様なビジネスモデルも出てくる可能性がある。

 そんな思いを胸に、元気な中山間地域を求めてロングドライブはつづく。


※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません