2016.6.8
  「本音と建前、職場のコミュニケーション」

                                         副参事 上野台 直之


 
タイトルと異なり、ゆるいコラムで恐縮ですが、少し前に放映されていた某有名製麺企業のテレビCMを皆さん御覧になったことはあるでしょうか。(最近はやり過ぎたようですが。)
 「日本は『本音と建前』の国です。」という外国人の方のナレーションから始まり、様々な仕事(?)にまつわる場面が展開され、最後はタレントの上島竜兵さんが、熱湯風呂の上から、「絶対押すなよー!」という名ゼリフと共に伝統芸を披露する。麺を茹でる“熱湯”に掛けたコメントで締めるというCMです。

 いかにもな「本音と建前」的な場面を、短い時間の中でテンポよく、揶揄しながら表現している。そして、そのコミカルさを利用し、現実に国際的な企業である自社のイメージアップにつなげている。表向きはオフザケですが、実は日本のコミュニケーション文化、「言わなくても分かるだろう」という暗黙を逆手にとり、外国人の視点という設定から、日本のコミュニケーションのおかしさを客観的に批評(自嘲)しているという、(私は勝手にそう思っているのですが)秀逸なCM映像です。
(YouTubeなどに残っているようですので、機会がありましたら御覧になってみてください。「○○食品 カッ○ヌードル CM 本音」でヒットするようです。)

 もう一つ。私の過去の職場の例で「雑談理論」というのがあります。
 職場を明るくする天賦の才をお持ちの先輩がいたのですが、この方、業務に関することだけではなく、思いつくままに全く関係ないこともひたすら話す、話す。新しく着任された方にもフランクに話は止まらず、周りの同僚もこの方のパーソナリティを知っているので、「あー、また始まった。」とか「その話、5回聞いているんだけど。」「(初対面に強いので)自治研では最強でしょう。」、終いには「うるさいんだけど。」など、互いにツッコミながら仕事をしてきました。
 ある時、その方が雑談もせず、真面目に寡黙にパソコンに向かっていたのですが(職務専念義務で当たり前なのですが・・・。)、周りの同僚はそれを敏感に感じ取り、「雑談が無い。おかしい。きっと、あの仕事が何かマズイことになっている。緊急事態だ。」ということで、同僚で各タスクを分担しながら当面の危機を乗り越え、結果、良い仕事につながったという例がありました。
 振り返ってみると、当時、誰も意識はしていなかったのだと思いますが、日ごろからそうした雑談を通じて、図らずも職場のコミュニケーションを取っていた、それぞれのパーソナリティ・持ち味を分かり合いながらお互い仕事をしてきたということであったかと思います。

 二つの取り留めもない話ですが、「察し」の文化が根付いている日本という国において、我々が仕事を行う中でもそうした場面が多々あると思います。発せられた言葉から、その意を汲んでスピーディに本質を捉えるという良い面、一方、それが逆に違っている、誤って解釈する、齟齬・誤解を生むといった悪い面の両面があります。
 通常業務の中では「言わなくても分かるだろう」という考えに陥りがちですが、相手が伝えたい本質的な内容を意識的に聞いていく、そして、分からないことは自らが話して聞き取る、確認していくということが、自戒を込めて、円滑に仕事を進めていく上では大切なことと思います。
 そして、雑談でも業務の話でも良いのですが、職場の同僚との日ごろのコミュニケーション、特にイザという時はそうした日々の交流の蓄積が大きな力を発揮するのであろうと思います。

 今年度の新規採用職員研修も無事に終わりましたが、新採用職員には、何でもよいので是非、職場でのコミュニケーションを積極的に取っていただき、周りの先輩も温かくそれに応えていただきたいと思います。たとえそれがこのコラムのような“雑談”であっても。



※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません