2017.1.6
  「持続可能な地域づくりと広域連携」

                                総括支援アドバイザー兼教授 吉岡 正彦


  2016年11月、福島県内の隣接する2つの自治体から、「持続可能な地域をつくるために―広域連携の視点から―」というテーマで、講演の依頼をいただいた。
 全国で人口が減少し高齢化が進むなか、持続可能な地域づくりと、互いに協力しあいながら地域振興を進める広域連携は、ともに重要なテーマである。筆者は、以前、広域連携に関する本を執筆した経緯もあり、喜んでやらせていだだいた。以下に、その概要を紹介したい。

 ○なぜ今、持続可能な地域づくりなのか
 やはり直接的な要因としては、2013~2014年に発表された、いわゆる増田レポート(日本創成会議)による「地方消滅」論による問題提起が大きいのではないか。(注1)
 同レポートによれば、今後、予想される人口減少と東京圏などの大都市圏にわが国全体の人口が吸い寄せられて、地方は消滅する恐れがある。
 2040 年の若年女性(20 歳~39 歳)の人口が、半減以上になる「消滅可能性都市」は、896 市区町村、その中で、2040 年の推計人口が1万人以下になる「消滅可能性が高い都市」は、523 市区町村になると予測し、全国の地方自治体にショックを与えた。(なお、この予測には、東日本大震災と原発事故に直面した福島県は含まれていない)
 そこで、「地方消滅」を避けるためには、 「東京一極集中」に歯止めをかけるとともに、地方においては、地方中核都市を中心として人口流出を止め(連携中枢都市圏の形成)、コンパクトな拠点と地域のネットワーク形成が重要、と提案している。
 なお、この議論には批判もあり、人口統計に基づく一律的な予測であり、個別市区町村の状況を考慮していない、都市から農村への「田園回帰」傾向を過小評価している、などの指摘がある。

 このような予測結果の当否は別としても、わが国の多くの地方が直面している大きな流れとして、人口減少・少子高齢化、財政悪化→行政サービスの低下、住民負担の増加、生活環境の悪化→人口減少・企業の流出→地域の衰退→財政悪化、というような悪循環構造が指摘できる。(図1)
 そこで、このような流れをストップし、好循環に反転するためには、地域振興、産業振興、人口増加策、住民参加・協働などの対策が必要となっている。このところ政府が、固定資産税や酒税などで増税策に苦心しているのも、国の財政再建策の一例といえよう。

       図1 地域社会が直面している悪循環構造モデルと対応方向

    
 ○持続可能な地域をつくるために
 そこで、持続可能な地域づくり、すなわち現世代から将来世代への継承に向けて、地域社会の再生産を創出する地域構造やしくみ・システムが求められており、このためには、次に示す3つの視点を提案したい。
 1.(まちづくり)地域社会、コミュニティづくり
  インフラ整備、公共交通、コミュニティ、循環型社会づくりなど
 2.(ひとづくり)人口増加、子育て、人材育成
  定住、移住、多世代交流、ふるさと教育など
 3.(しごとづくり)就業機会、産業振興
  しごとの確保、経済の循環、輸出・移出(地産地消→広商※)など
 (※ 地元で生産したものを地元消費に限らず、広く販売するという意味)

 つまり簡単に表現すれば、昨今、よく見聞きする「まち、ひと、しごと」づくりとなるが、そのためには、「守り」と「攻め」による地域戦略が有益である。すなわち、地域外への経済力の流出を防ぎ(守り)、自立したまちづくりをめざす(攻め)、という「循環型自立経済圏づくり」を提案したい。
 「循環型自立経済圏」を考えると、つぎの3つの要素から構成されよう。
 1.域外に流出していた資金などを、域内で生産し消費する
  これまで地域外から物やサービスを購入することで、域外に流出していた資金などを、域内で生産し消費する地産地消を一層進めることにより、域内で循環させる地域内経済循環の取組を進める。
 2.地域内の基幹産業強化と移出・輸出の促進
  基幹産業の生産性と付加価値を高めて、地域の資源を活かした新たな価値の創出などにより移出・輸出(広商)を促進し、域外からの資金獲得などを進める。
 3.地域外からの観光客らに地場で消費をしてもらう
  都市や地方との共生を推進することで、移住・交流人口を増やし、地域外の人々に観光・体験などで地場に来てもらったり、ネットを通じて消費してもらう。

 すなわち、これらをまとめると、
 1.(循環)域外に流出していた資金などを、域内で生産し消費する
 2.(移出・輸出)基幹産業の生産力を強化し、域外から資金などを獲得する
 3.(流入)域外からの観光客らに地場で消費してもらう
という3つの視点が有益であり、地域で生産・サービス提供する供給力を育て、域内での調達率を高めつつ、移出・輸出や観光客らの流入を通じて域外から資金などを獲得し、地域内循環を高めるしくみづくりをめざすということになる。(図2)

   図2 自治体の循環型自立経済圏形成のイメージ


 ○広域連携が求められている背景
 つぎに、広域連携が求められている時代背景を整理すると、次の4つの視点があげられる。
 1.「縮小する社会」のなかで、人、もの、資金を集めて生かす必要性
  規模の小さい自治体では人材や産業などの地域資源が限られるが、連携することで、多様な人、もの、資金を集め生かすことができる。
 2.「競争社会」のなかで、自治体の戦略の幅を広げる必要性
  グローバルな競争に対して、小さな自治体や企業が単独で挑んでも厳しいが、連携することで、競争上の戦略の幅が広がる。
 3.「ニーズが多様化」するなかで、継続的なサービスを提供する必要性
  人々のニーズが多様化するなかで、市町村間で分担あるいは連携することで、住民のニーズにあった多様なサービスを継続的に提供することができる。
 4.人や物の「移動圏域が広がる」なかで、対応を可能にする必要性
  人や物の移動が広域化しているなかで、広域圏として連携することで、必要なサービスを提供することが可能になる。

 そこで、広域連携のメリットを整理すると、以下に示すような各項目が指摘できる。
 ・知名度の向上、集客力のアップ
  →まとまった資金確保による宣伝力アップ、利用者の増加・拡大
 ・交流範囲の拡大
  →人的交流・パートナーシップの拡大
 ・信用力、競争力の強化
  →大規模化・広域化による対外的な信用力や競争力・活動力の強化
 ・住民サービス水準の向上
  →高度な施設建設やサービス提供による住民サービス水準の向上
 ・地域の中核的施設の建設や再編が可能
  →まとまった資金確保による大規模施設の建設、類似施設の統合
 ・資金や土地の有効利用
  →類似施設の整理・統合による土地の有効利用
 ・運営・維持管理費の節約
  →類似施設の整理・統合による運営・維持管理費の節約
 要は、お互いに連携することで、「地域の可能性が広げる」とまとめられよう。

 このような効果を実現した一例として、少し古いが、栃木県の那須野が原ハーモニーホールの建設を紹介したい(1994年に完成)。
 那須野が原ハーモニーホールの建設にあたり、地元自治体であった大田原市と西那須野町(当時。現在は那須塩原市)は、お互いに連携することで、グレードの高いコンサートホールの建設に成功した。その経緯は、およそ以下に示すとおりである。

 ・従来より、隣接する大田原市(5.4万人)と西那須野町(4万人)は、交流が深かった。
 ・大田原市長は市民ホールの建設を公約にしていたが、周囲の矢板市、黒磯市にはすでに大きなホールがあったため、コンサートホールの建設を考えた。
 ・その場合、市単独で建設するよりは、西那須野町と共同で建設することで、良い施設が負担が少なくてできるのではないかと考え、両市町間で建設調査委員会をつくり協議を続けた結果、共同による建設が実現できた。
 ・結果として、単独では出来なかった質の高いコンサートホールが完成し、運営費も折半することで、著名な楽団を招くことができるなどのメリットが生まれた。
 ・当時、この地域は「文化不毛の地」と呼ばれることもあったが、知名度の向上、地域のイメージアップにもつなげることができた。(注2)

    表1 那須野が原ハーモニーホールの概要

資料:国土庁、日本総研『複合と連携』ぎょうせい、1997年より作成

 ○広域連携の成功ポイント
 このような好事例などから、広域連携の成功ポイントをまとめてみると、以下のようになる。
 《成功に向けた着眼点》
 ・シナジー(相乗)効果への着目
 ・補完関係(長所・短所の補完)の構築
 《成功に向けた基本姿勢》
 ・お互いのねらい・目的がはっきりしていること
 ・強いリーダーシップが必要
 《WIN-WINの効果をどうつくるか》
 ・「三方良し」の精神、すなわち、近江商人の「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」という相手や周囲にも配慮する心得が大切

 なお、当然のことだが、広域連携は良いことばかりとは限らない。場合によっては、以下に列記するような問題や短所も有している点には、注意する必要がある。
 ・意思決定や責任の所在が曖昧になりがちになる
 ・建設費や維持管理費用など負担の調整が必要
 ・中心地域や施設に機能が集中しがちになる
 ・その結果、防災などのリスク分散に弱くなる場合がある

 以上の議論をまとめてみると、広域連携を成功させるためには、何よりも関係する主体間の「信頼関係が不可欠」といえよう。
 最後に、持続可能な地域づくりと広域連携の関係を簡単に整理すると、図3に示すようにまとめられるのではないか。
 つまり、人を呼び込み、産業とくらしの基盤をつくり、お互いに支え合う地域づくりが目標となり、そのためには、創意工夫によりさまざまな連携パワーを創り出す必要がある。
 
          図3 持続可能な地域づくりと広域連携の関係例



(注1)増田寛也編著『地方消滅』中公新書、2014年ほか
(注2)国土庁、日本総研(筆者共著)『複合と連携』ぎょうせい、1997年

※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません