2017.1.19
  「高校生が活躍する町」

                                総括支援アドバイザー兼教授 吉岡 正彦


 「トランヴェール」という、JR東日本が発行している月刊雑誌がある。東北新幹線に乗るとき、各座席の背中ポケットに配られているので、たまに手に取ることがある。
 内容としては、おもに東北地方に関連する旅や地域情報が記載されているが、2017年1月号をペラペラめくっていると、「明日を見つめる東北 高校生が活躍する町」という見出しが眼に入った。

 高校生が活躍する町って、どこの町なんだろうと興味を感じて読んでみると、福島県南相馬市にある原町高校、小高工業高校、小高商業高校の生徒たちの活動が紹介されていた。
 大震災と原発事故により被災した同市小高区の復興・活性化に向けて、これら3高校の生徒11人が、LLO(ライブ・ライオンズ・オダカ)というグループを結成して、提案事業を行っているという記事である。
 そんな活動の一つとして、市内の菓子店・松月堂とともに「結芽(ゆめ)」というサブレの菓子を開発した。この商品名には、笑顔の輪がつながって結ばれ、未来の芽が育っていくように、との願いが込められている。
 メンバーによれば、「味はもちろん、手軽に食べられる大きさで、高校生が気軽に買えるように価格も100円以下に抑えた」。なんとも高校生らしい細やかな配慮が感じられる。地元の秋祭りで2日間販売したところ、みごとに完売したとのこと。すばらしい活躍である。

結芽にはチョコ、イチゴ、キャラメル味の3種類がある。(LLOのホームページより)

  また、2016年11月には、南相馬市長に対して、LLOの活動報告と小高区の復興・活性化のアイデアを提案する「公開プレゼンテーション」を行った。今回は2回目で、メンバーからは、復興に向けて活動する人たちにインタビューした成果の発表、古い蔵を再生させてカフェにするという提案、あるいは、光るゴミ箱やベンチを置いて、通学路をにぎやかにしたり、空き地に移動販売の屋台を誘致するというアイデアの発表があり、会場から大きな拍手が起きたとのこと。発表した生徒たちも、さぞやうれしかったに違いない。
 このような活動は今後も継続していき、大学進学でいったんは地元を離れても、卒業後は戻ってきたいと抱負を述べている。
 帰宅後に、パソコンでLLOのホームページを見てみたら、公開プレゼンテーション当日の発表の様子などが、何枚かの写真とともに楽しげにツイートされていた。(注)

 以上の原稿を書いていたら、2017年1月13日の福島民友新聞にも、小高商業高校の生徒たちが、県産食材を利用した弁当と豚汁を開発して、ローソンで販売を始める、との記事が出ていた。
 同高とローソンの共同開発は昨年に続き2度目で、地産地消と復興支援を目的に「県産食材を使い、地域活性化を応援したい」との思いが込められている。弁当は1万食、豚汁は4千食を販売し、売り上げの一部は、東日本大震災で被災した高校生、大学生を支援するローソンの奨学金制度「夢を応援基金」に寄付される、とのことだ。頑張っているなあ、と感心した。

 そういえば、昨年の夏ころに、福島商業高校の生徒たちが、県産の桃を使ったスイーツ(水ようかん)を開発したというニュースを読んだ記憶がある。伊達産の卵、福島乳業の「福ちゃん牛乳」を使用して、福島市の和菓子店・松屋清風庵の協力を得て商品化されたという内容だった。
 また、一年前くらいの福島民報新聞には、西会津高校の生徒が西会津町特産の車麩(くるまふ)を使った新しいスイーツ「車麩ラスク」を開発した、という記事もあった。車麩をバターシュガー風味に焼き上げたラスクとのことで、どんな味や食感なのか、食べてみたいと思い記憶に残っていた。
 さらには昨年度、コーディネーターとして参加させていただいた福島県主催のチャレンジふくしま若者リーダーまちづくり事業では、社会人や大学生に混じって、高専生たちも参加して熱心に発言していた。そういえばと、10代の若者らがまちづくりや産業振興などをテーマに頑張っている姿を、芋ズル式に思い出した。
 筆者が高校生の頃には、このような起業的な活動で社会や地域と係わることはとても考えられなかったと、改めて感心するとともに、こうした若いパワーが福島の震災復興を推進してくれていることをうれしく思う。

 なお、この号には、2016年12月10日に大震災による被害や原発事故の影響を受けて運休していたJR常磐線(相馬-浜吉田間)が運転再開された、との紹介もあった。およそ6年ぶりに、相馬駅と仙台駅間がつながったことになる。
 加えて同じページには、全国的に知られる相馬地方を代表する行事である「相馬野馬追」が、2017年は7月29日(土)~31日(月)に開催予定であること。あわせて、相馬地方の「歴史」として、相馬太田神社(南相馬市)、相馬小高神社(南相馬市)、相馬中村神社(相馬市)、「復興」として、相馬市伝承鎮魂祈念館(相馬市)、かしま復幸商店街(南相馬市)、「体験」として、甲冑着付け体験(南相馬市)、「美食」として、松川浦復興チャレンジグルメ(相馬市)、凍天(南相馬市)、いちじく愛す(アイス)(新地町)などの観光資源や特産品が、写真付きで紹介されていた。
 さらに、相馬いちご狩り、どんと祭り、石上子どもみこし行列などのイベントの紹介もあり、こうして列記してみると、相馬地方にはたくさんの観光資源や特産品がある。こうしたJR常磐線の復旧が、相馬さらには双葉地方の観光再興などに大きく貢献するにちがいない。

 若者たちの活躍、インフラの復旧など、このところ福島県の復旧・復興に関連して、明るいニュースが重なってきているように感じられて、心が明るくなる。

() LLOのホームページ、20161111日、参照
https://twitter.com/LiveLinesOdaka         

※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません