2017.10.25
  「自動車のEV化

                                          主任主査 仁後 篤比古


 
近頃、「自動車のEV化」を巡る議論がかまびすしい。

 そもそもの発端は、2015年に、フォルクスワーゲン社製の一部のディーゼル車において、排気ガス規制をクリアするための不正なソフトウェアの搭載が発覚したことと言われている。
 背景には、厳しい環境規制への対応と高燃費の両立の難しさがあったのだと思う。

 各国政府の動きとしては、今年の7月に、英国とフランスが2040年までに内燃機関の国内販売を禁止する方針を打ち出したほか、世界最大の自動車市場である中国(2016年の自動車販売台数2,800万台)も、国内で生産する自動車について、その一定比率をEVなど新エネルギー車とするよう義務づける方向と伝えられている。
 各自動車メーカーにおいても、ボルボが「2019年以降全ての車種を電動化」する方針を打ち出すなど、これまでの車種のラインナップに大きな変化が訪れようとしている。

 飛び交うニュースを見聞きしていると、
「これからはEVに乗り遅れた自動車会社は潰れる」
「もはや内燃機関に未来はない」
「EVは内燃機関に比べて必要な部品の数が少ないから自動車産業の雇用への影響が懸念される」
といったことが取り沙汰されているが、自分なりに思ったこと(報じられていないこと)を書き連ねたい。

 1点目は、英仏両政府の打ち出した内燃機関の販売禁止について、である。
 こうした方針が打ち出された背景には、欧州での大気汚染の深刻化があるようだ。
 自動車に着目すれば、元々、長距離巡航に有利なディーゼル車の人気が高く販売比率が高かったことが素地にあるが、もう一つ無視できないのが、欧州では、暖房の燃料として薪ストーブや木炭などが広く使われている、という点だそうだ。「大気汚染の原因はディーゼル車」とばかりは言えないのではないか。
 また、自動車の平均所有年数の国際比較を調べてみたところ(古くて恐縮)、2008年末のデータで、日本13.3年に対して、フランス15.2年、デンマーク16.8年、フィンランド22.0年と、欧州では自動車の保有年数が長い国が多いようである。各国とも市場規模など、自動車を巡る情勢は様々であろうから一概には言えないが、所有期間が長く相対的に年式の古い自動車が多ければ、現行の環境規制に適合しない自動車の割合が高くなるのではないか。旧共産圏の東欧諸国では、この割合がさらに高まるかもしれない。
 こうした実情を踏まえると、ディーゼル車の利点(CO2排出量の少なさ、高効率燃焼、低速時から発生する高トルク等)を一切無視してパニックに陥ったごとく「脱ディーゼル」に向かうのは、いささか短絡的ではないかと思う。

 2点目は、EVシフトに伴う産油国への影響について、である。
 充電のため新たな電力需要の発生が見込まれるが、今後も一定程度は化石燃料による発電に依存せざるを得ず、短期的には石油需要に大きな変化はないにしても、EVシフトの進展と同時に再生可能エネルギーが普及していくと、中長期的には需要の減退が到来するのではないか。
 こうなったときに懸念されるのが産油国の情勢である。現時点でも産油国の中には政治情勢が不安定な国が多く、例えばベネズエラでは政権に対する国民の不満が沸騰状態にあるほか、ナイジェリアでは国内における過激派武装勢力の暗躍がやまず安定にはほど遠い状態にある。
 こうした国々では、将来の国民生活の安定をどう図るかが大きな問題になってくることが予想され、「自動車のEV化」だけを追い求めるのではなく、産油国の国民生活も考える必要があるのではないか。

 3点目は、石油そのものについて、である。
 原油を採掘して精製すれば、様々な製品ができる(ガソリン・軽油・灯油・重油等)。
 こうした現実の下、例えば「脱ディーゼル」を進めるにしても「原油を精製してできた軽油をどうするのか」を考える必要があるのではないか。
 まさか「軽油は要らないから流して捨ててしまおう」というわけにもいくまい。

 「〇〇〇〇年までに内燃機関の販売を禁止」「〇〇〇〇年までにディーゼル車の生産を中止」といったことは、「一国の政府の政策」、「一つの自動車メーカーの経営方針」と思うが、「自動車のEV化」を考えるに当たっては、上記の点も織り交ぜることが必要なのではないか。

 とまあ、あれこれ小難しい話を書いたが、私は心底車が好きだ。これからどのような車が登場するか、素直に楽しみである。10月27日(金)から11月5日(日)までの間、東京モーターショーが開催されるので、行ってみたいと考えている。
 私事で恐縮ながら、これまで何台か愛車を乗り継いできたが、全て内燃機関車だった。
 とりわけ直近の歴代3台は「ハイオクガソリン車」であったため、妻からは、「燃料費が割高である」「真にやむを得ない必要性・合理性が認められない」といった理由から、今後の買い換えに当たり「ハイオクガソリン車の購入禁止」を厳命されているところである。
 私としては、家庭内で打ち出された「政策」を踏まえ、次期愛車の選定に当たっては慎重な検討が求められているのである。


※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません。