2017.11.8
  「5時からスナック

                                               教授 国分 敏明


 
久々、通い慣れた「スナック」に入った。いつものように「お久しぶり・・」「元気だった・・」・・「元気だから来たんだよね・・」と年寄り談義からはじまる。開業当初からの客で早30年になる。

 職場の飲み会や接待の二次会で重宝された夜の社交場として栄えた時代から、若者・若年層が遠のき、カラオケ店の登場で客足が遠のき、多くのスナックが潰れる中、細々と(でもママのスタイルは成長しつづけ)生き残ってきたお店の一つである。

 生き残ってきたお店に共通しているのは「一人で対面接客するこぢんまりとしたカウンター形式のお店」だ。人間味のあるママとの会話を楽しみながら、ちょっとした手料理を味わい、他のお客さんとの一期一会的なやりとりを楽しむ。常連さんとも世間談義に花を咲かせる。そんな、「居心地の良さ」を感じた人の止まり木のような場所だ。

 時代は遡り1964年の東京オリンピックやら、芸能界の当たり年(ママが生まれた昭和33年繋がり)の話、政治の話はしないことが鉄則なはずが、なぜか小池都知事の話となると饒舌になる客人(キャスターの時代の話)、下ネタが受けなく早々に退散した新規の客人。自由に時間・空間を飛び、映像も多彩だ。

 さまざまな人が出入りし、悲哀のある深い話を語ったり、職場の人間関係の話、なんで自分を分かってくれないのかと酔いつぶれてしまう客など、人生の断面を垣間見ることができ、深く学べる場所でもある。帰る時、チャンネルを戻し、ドアのカランコロンの音と共に現実の時間に帰って行く。

 そんな社交場を切り盛りするママは場の空気を読み、臨機応変に振る舞う技量の持ち主だ。帰り際にチャンネルをキチッと今に戻してくれる。さすがにすごい。いつも感服する。

 今、世の中は、企業戦士が「働き方改革」という荒波にもまれて右往左往している。残業禁止令が出てもいつもの時間に帰宅する。一人の時間が突如として数時間創出された。戸惑う企業戦士が数多くいる。

 人間味のあるママとお客さんが、作り出す癒やしのオアシスといえるスナック。8時頃から9時頃にオープンする『9時からスナック』から5時頃から6時頃にオープンする『5時間からスナック』が必要な時代なのかも知れない。

※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません