2017.12.27
  「企業版ふるさと納税の活用は広がるか」

                                              主幹 伊藤 智美


 
地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)は2016年度に創設され、地方創生に取り組む自治体に寄附した企業が法人住民税などの税額控除を受けられるという制度である。
 従来から国や地方公共団体への寄附は、全額が損金算入され、税額控除により約3割の税の軽減効果を得られていたところに、この企業版ふるさと納税により、新たに寄附額の3割が控除されることで、企業は例えば100万円の寄附に対して、これまでの2倍、約6割の税の軽減効果が得られるものである。
 これに先駆けて2008年に始まった個人向けのふるさと納税は、使い勝手を改善しながら着実に実績を伸ばし、自治体間に過度な返礼品競争を巻き起こしたという負の面がクローズアップされたこともあったが、この10年で広く認知され、住民が自ら自治体を選んで寄附する、という行為も浸透してきた感がある。
 企業版ふるさと納税についても、自治体にとっての、地方創生に向けた施策を推進するに当たって新たな自主財源確保の手法として、また、企業にとっては税控除の優遇を受けながらCSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)を果たすことができるツールとして、双方にメリットを生かして活用が期待されている。

 この制度を活用するためには、自治体が「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を地域再生計画として申請し、認定を受けることが必要で、これまで5回にわたって国による地域再生計画の認定が行われた。
 認定事業数は累計387件、総事業費1,064億円となり、制度の活用が着々と広がっていく一方で、積極的に制度を活用している地域と、まだ活用が少ない地域とに差も出始めている状況である。

 このことから、「企業版ふるさと納税の動向と活用」をテーマに、本県自治体へのアンケート調査や活用している自治体へのインタビューなどを通して、制度を活用するに当たって参考となるような事例や情報等を調査し、情報提供事業として取り組みたいと考えた。

 アンケート調査では、県及び県内市町村の47自治体から回答を得た。県内で既に制度を活用している自治体は6自治体で、認定された事業は8件である。これらの自治体に寄附獲得の方法を伺うと、事業認定前は、業務を通じた関わりや自治体内に支店や工場が立地する、企業の社長が出身地である等の縁を通じて獲得していた。また、そのうち3自治体が事業認定後に新たに寄附を獲得しており、その場合は企業からの寄附申し出であった。
 事業の認定による効果については、企業から寄附への関心が寄せられた、寄附の申込みがあった、自治体事業のPRにつながっている等、一定の効果が得られていることが分かった。
 今後も活用していくために必要な要件としては、企業からの積極的な寄附行為を挙げ、制度の改善要望としては、事業費確定前に寄附を受け入れられるようにしてほしい、という回答があった。
 一方、制度をまだ活用していない自治体に、その理由を伺うと、寄附の確保が難しい、人員不足、制度活用に適した事業がない、等が多かった。未活用の自治体が今後制度を活用していくに当たっては、寄附獲得の手法や企業へのアプローチの方法、制度活用のメリット・デメリットや制度を活用しやすい事業の特性等の情報が参考になるとの回答が多かった。

 認定された事業は、内閣府の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で公表されるとともに、自治体においても積極的なPRが期待されている。
 自治体の多くはHPによるPRに取り組んでおり、報告書に主なものを列挙した。
 各自治体のHPを調べてみると、大まかに、”ふるさと納税”というキーワードから税務関係のページに掲載されている場合と”まち・ひと・しごと創生戦略”や”地方創生”をキーワードに総合計画や地方創生関係のページに掲載されているところとに分かれていた。
 いくつかの自治体では、トップページに企業版ふるさと納税のアイコンを用意して、目的のページへ直接つながるようにしてあり、また、徳島県の「企業版ふるさとOURとくしま応援サイト」は、この制度専用のサイトとして、制度の説明、個別事業の概要や寄附の手続き等、知りたい情報が得られやすく作られている。

 この制度を活用することで自治体は自主財源を確保し、財政負担を軽減できるだけでなく、企業が地域への関心を高め、自治体が実施する事業のPRにもつながるなどの効果も期待されている。
 また、県外自治体の活用事例やインタビュー等を通じて、企業版ふるさと納税制度の活用をより広げていくためには、制度の趣旨を踏まえつつ、寄附する企業や事業を実施する自治体のニーズを把握して使い勝手を良くしていくことも必要であると感じた。
 この制度は、現在のところ平成31年度末までの時限的な措置で、その後も制度が継続するかどうかは、この間の事業実績や制度活用により得られた効果等から判断されることになろう。より多くの企業に制度を知ってもらい、寄附を通じた地域貢献が広がり、より多くの地域活性化につながることを期待したい。

 調査の詳細は、
平成29年度情報提供事業「企業版ふるさと納税の動向と活用」をご覧ください。
http://www.f-jichiken.or.jp/tyousa-kenkyuu/seisaku_shien.html

参考URL
内閣府 企業版ふるさと納税ポータルサイト
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html
徳島県 企業版ふるさとOURとくしま応援サイト
http://www.pref.tokushima.jp/furusato-ouen/company/

※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません