2017.4.26
  「time to quit

                                           主幹 伊藤 智美


 
少し前、義父が自動車を運転していて交通事故を起こした。幸い相手も自分もけがはなく、事なきを得たようだが、車の方は修理が必要となりしばらく代車で過ごした。普段から運転には慎重で、市内の、道が分かっているエリアで乗っている義父であるが、やはり80歳を超えての運転にはリスクを伴う。
 本当ならこれを機会に「もうそろそろ免許証を返納してはどうでしょうか」と言いたいところだが、普段嫁らしいこともしておらず、あまり口出しをするわけにもいかない。
 しかし、もともと車庫入れがしにくい駐車スペースというのもあり、少し道にはみ出して停まっている車を見るとふと心配になる。
 「もうずいぶん長く乗っている車ですし、市内の知っている道だけの運転でしたら、今ほど大きな車ではなくてせめて軽自動車に買い換えたらどうでしょう?今の軽自動車は、昔と違って中も広くなっていますし、心配するほど腰への負担も少ないと思いますよ。」と義母に伝えてみた。義母も同じように思っていて、親戚からも、軽自動車への乗り換えを薦められたらしいが、本人は今の車を最後まで乗りつぶすんだと頑として耳を貸さないらしい。

 世間では、高齢ドライバーによる交通事故が大きな問題となっており、警察や自治体は、運転免許証の自主返納を促そうといろんなアイデアを練っている。
 しかし、公共交通が充実している都市とは違い、地方では利用するにも限られ、慣れ親しんだ自動車にとって代われるほどの「足」とはならないため、なかなか進んでいないのが実情である。
 義父母宅は徒歩2~3分のところに鉄道の駅があり、しかもその電車、高齢者は無料で乗れるとあっても、やはりドアツードアでのマイカーには代えられないようで・・・。

 昨年度、「地域公共交通」をテーマに共同調査研究に取り組む中で、地方における公共交通サービスの不便さを実感し、一方で、利用しにくいと言われながらもマイカーに頼れなくなった高齢者等の「足」としての期待やまちづくりの土台として公共交通の必要性も理解したつもりである。
 そして深刻化する高齢者の交通事故を防止するには、代わりとなる公共交通サービスの利便性向上はもちろんのこと、高齢者自身もいずれ運転免許を手放すときが来ることを、その引き際を見極める必要があることを、そのためにもまだ元気なうちから公共交通での移動に親しんでおく必要があることを感じた。マイカーにさえ乗れなくなってからでは遅い、と。そんなことを考えるに至ったにも関わらず、身内の引き際を決める難しさにジレンマを感じている。

 自動運転の技術が急速に進展し、新しい車には標準装備で高い自動制御機能もついてくるようになってきている。しかし、安全性を高めた車は、やはり高価なのでなかなか年金暮らしなどの高齢者世帯への普及は難しいかもしれない。せっかくAI(人工知能)を駆使しても、普及しなければ高齢者の交通事故は減らせず、予防にはつながらない。

 何とか手だてはないものか。なぜ今の車を乗り続けたいのか?買い換え費用が負担なのだろうか?

 だったら携帯電話みたいに継続期間が長いほど、お得に機種変更ができればどうだろう?(車なので車種変更か)今は、新しい車ほど下取りで高い値がつき、新車ほどディーラーさんとの交渉次第で値引きがされる。
 そうではなくて、同じ車を長く愛用したドライバーほど、買い換えの割引を大きくしてもらえないか。全部の車を対象としなくてもいい。また、みんながみんな車の買い換えを控えてはメーカーも困ってしまうので、高齢ドライバー限定とかで。また、対象は「安全運転サポート車」など加速抑制機能を高めた車で、シルバー長期愛用割引なんていうのができれば。或いは、割り引き部分を自治体が助成するとか。
 そして、将来的にはマイカーに搭載されたAIがオーナーの運転技術データを蓄積し、客観的に技術レベルや状況判断力を診断して、オーナーへ「マイカー卒業」を促してくれないものだろうか。一定基準以下の“衰え”が見られた頃、「免許証を返納しましょう。」と声かけしてくれたら。身内から言われるより、第3者(?!)から言われたら思い切れるだろうか。

 そんなコトを妄想しつつ、目下の対応策としては、交通事故予防と公共交通利用の一石二鳥をねらい、子供達には独力で電車に乗ってじいじばあばの家へ行けるように練習させること。
 しかし、今日もまた、時季外れのインフルエンザで学級閉鎖となった孫と留守番のため、じいじは車で我が家へ向かってくれた。もっと練習を頑張らないと。

 It is important to know when to quit(leave)『引き際が肝心だ』

 参考:平成28年度共同調査研究事業
小野町「地域のニーズにあった地域公共交通サービスの調査研究」
http://www.f-jichiken.or.jp/tyousa-kenkyuu/kyoudou-tyousa/kyoudoutyousa.html


※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません