今年度は、須賀川市とクラウドファンディング等の新たな資金調達手法について共同調査研究に取り組んでいる。そういう中で、須賀川市の『今』を知りたいと、娘を誘ってRojimaに出かけた。
Rojimaとは、「すかがわの路地でマーケット」のことで、地元の有志が実行委員会を組織して主催するフリーマーケットである。7月のこのときで22回目の開催ということで、すっかり地域に根付いて盛り上がっているらしい。月1回くらいのペースで開催されているようなのでもう2年ほどになるだろうか。
今回は、せっかくの機会だからと、福島から電車で出かけてみた。Rojimaの開催場所までは須賀川駅から徒歩20分程度のはずだったので、それくらいなら多少熱い中でも歩けるし、駐車場を探す手間もいらない、たまには電車でお出かけも新鮮だし、と。
福島から東北本線に乗って南下し、郡山で乗り換えて1時間10分程度で須賀川駅に到着。通常はこのRojima、日曜日の日中に開催するらしいが、この回は、土曜日の15時から20時となっていた。まだ梅雨明けしていないのが不思議なくらい暑い日が続いており、夕方開催なら出かけるにも好都合。さらに、時間帯を意識した少し大人向けの趣向もあるらしい。
15時半くらいに須賀川駅に着いて改札を出たところ、同じように駅で降り立った人たちが数人いたのだが、気づくと皆す~っと散ってしまい、歩き出したのは私たち親子だけ。広々したまっすぐな道路を、まだまだ日差しの強い時間帯であったが、会場を目指した。
少し前、すかがわの“売り”は「『ウルトラマン』と『坂』と『俳句』なんだって」と耳にした。ウルトラマンはよくいろんなところで目にするので認識していたし、俳句は、牡丹園を会場に俳句の会が開かれた、とか芭蕉記念館がある、とか新聞で見聞きしていたこともあり、なるほど、と思ったけれど、坂は意外だった。これまで何度か市内に来ていたが、車で通過してしまうからか、アップダウンを意識することがなかったせいかも。
その意味でも歩いてみることで、いつもと違う景色が見える。早速、すかがわ代名詞の一つ、「坂」に到達。花火大会で有名な釈迦堂川を渡ったところから釈迦堂坂が始まる。右手高台に大きな病院を見ながら、坂道を上っていく。こんな暑い日じゃなければ楽々上れるんだけど・・・。のんびりおしゃべりしながら進むと松明通りというメインストリートへ到着。
ここからは、二つ目のすかがわ名物、ウルトラマンや怪獣がお出迎え。道中、それらの像を見つけては、知ったかぶりで娘に解説する。「須賀川市ってね、ウルトラマンと坂と俳句のまちなんだって」
テレビで動くところを見たことがない世代には、「シュワッチ」で有名なポーズも意味は分かっていない。現代のヒーローと言えば戦隊ものでしょ、と。とはいえ、懐かしいはずの私も一つ一つ説明できるほど知っていなかったりするので、よく見るとシュワッチにもいろんなパターンがあることに気づいた。
ちょうど最近の新聞で、「テレビのヒーローが登場するキャラクターショーは親子連れの人気イベントとして商業施設などの集客に一役買っている。開催費用が構成人数によって変わり、7人ほどだと50万円前後が基本」との記事を読んだ。現在の戦隊ものは、正義の味方も悪役も大人数なのでその分経費がかさんでしまうが、ウルトラマンは1対1がベースで、主催者側にもやさしいヒーローといえるかも。
まだ会場まで遠いのかなと心配になってきた頃に、「くまたパン」へ通じる曲がり角に来た。せっかくだからお土産に買っていこうと寄り道する。地元の方に以前教えてもらった「幻のくまたパン」を求めて。あの砂糖がたっぷりついた名物くまたパンには、実は裏メニューとして砂糖をつける前のくまたパンがあり、これが美味しいとのこと。以前は、お土産用だったので、今度こそ自分用に。商品棚には陳列されていないので、通を気取ってお店のご主人に出してもらい、運良くゲット。
お店を出たところ、ちょうど真向かいが畳屋さんになっていて、そこに目的地Rojimaのポスターを発見。会場の場所を確かめていこうと店頭でポスターをじっと見ていたら中からお店の方が出ていらしたので、「これからこのRojimaに行くところなんです。まだここから遠いですか?」と聞いてみた。「私も今から行くところなので案内しますよ。うちも出店してるんです。」本業を活かして、畳の素材を使った雑貨などを作っている、とのこと。そんなお話を伺いながら歩くと会場はすぐそこだった。
早速、本部受付でパンフレットをもらったら、係の方から「今日はスタンプラリーをやってます。全部スタンプを集めると粗品と抽選で景品ももらえます。」との案内が。暑さに少々へばり気味だった娘も景品がもらえると聞いて俄然元気になった。マーケットのお店を一つ一つ覗くことよりもスタンプを探すことに意識が集中。ガラスや石で作られ、キラキラして繊細な手作りアクセサリーがたくさん並んでいるのを見向きもせず、スタンプを求めてどんどん進んでいく。
もらった地図を片手に、次のスタンプを目指して細い路地を曲がると、左手には石の階段を数段上がるあづまやがあった。裏路地だったため、ちょうど日陰になっていてちょっとした樹木に囲まれ、風情のある小さな空間には、俳句ボックスなるものが置かれていた。誰でも俳句を投稿できるらしい。
なるほど、これが「俳句」のまちたる所以か~、と隠れキャラを発見したような気分。
会場は数カ所に分散していて、手作り品を物色したり、露店で食べ物を買ったりしながら周辺一帯をぐるっと歩いてまわれるようになっていた。
最初に目についたのが、とても味わいのある手書きの案内板。会場内にいくつか設置されていて、統一感がありつつ、いい味を出していた。さらにメイン会場の入口近く、DJブースからはノリのいい洋楽がずっと流れていて、じりじりとした暑さと相まって、アジアのマーケットのような雰囲気を醸し出していた。

一般的なフリーマーケットでは、広場にシートを敷いて商品を直に並べているようなイメージがあったが、Rojimaでは、それだけでなく、通りに面して建っているビルやカフェを間借りしてお店が出ていた。普段は会社として使用されている雑居ビルやちょっと奥まっていて入るのに緊張しそうなバーやカフェが、今日はRojimaの看板が出てオープンスペース。中を進むと机や椅子を撤去して広くなったフロアにお店が並んでいた。地べたに並んでいるのもフリマっぽくていいけれど、普段なら素通りしてしまうビルやお店に入って涼みながらショッピングを楽しめるのも、ありがたかった。
また、アクセサリー作りやアイシングクッキー作りなど体験ができるワークショップがあって、大勢の若いお母さん方がそれこそ赤ちゃんを抱っこしたりおんぶしたりしながら、また小さなお子さんの手を引いて、暑さに負けず繰り出し、わいわいおしゃべりや体験を楽しんだりしている光景が印象的だった。
お客さんも、そしてお店の方も若い人たちでいっぱいで、Rojimaがすかがわに新しいにぎわいをつくっていることを体感してきた。
それほど広いエリアではなかったのに一つ一つお店を見ながらまわっているとあっという間に2時間が過ぎ、予定の電車に乗り損ねた。次の電車は逃すまいと、娘を急かしながら帰りの坂道を小走りに、時に猛ダッシュで駅へ向かった。
娘は自分用には買わずじまいで物足りなかったかな、と思い、「今日、楽しかった?」と聞いてみた。すると「おトモダチもできてすごく楽しかった」との返事。
彼女のいうおトモダチとは、最初に会場まで案内してくれた畳屋さんの親切なおばさん、アクセサリー作りのワークショップでセンスのいいブレスレットを見本に作ってくれたイケメン男の子と、その男の子がビーズアクセサリー作りを始めたのがきっかけで自分も始めたという彼のお母さん、など会話を交わしたお店の方達、とのこと。娘には、キラキラアクセサリーよりも、お店の人とのちょっとした会話や交流が楽しかった、らしい。そうかもしれない。思い出を作るのは、強く記憶に残るのは、きらびやかな観光スポットより、美味しい食べ物より、その場所で偶然出会ったヒトと、たまたま交わしたヒトこと、そしてちょっとした出会いのヒトとき、だったりするのかも。
でも、お母さん、スタンプラリーに急かされて買いそびれたあのアクセサリー欲しかったな・・・
こういう自発的な盛り上がりや地域の皆さんが熱心に取り組む活動をバックアップしていくには、アイデアを武器に資金を調達するクラウドファンディング等をうまく活用して新しい風を吹かせることができないか、帰りの電車の中で独りブレストは続く・・・
参考
Rojima HP:https://rojima.jimdo.com/
Rojima Facebook https://www.facebook.com/rojidemarket
※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません
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