2017.6.7
  「洒落の分からぬ男

                                            副参事 上野台 直之


 
世間には落語を題材にした絵本というものもあり、児が図書館から借りてきて愛読している。定番の「寿限無」に始まり、「大岡さばき」「初天神」「目黒のさんま」等々、読み聞かせをしているうちに、私自身も落語の世界にハマってしまった。そして最近では落語ブームがきているようである。これまで「笑点」しか知らなかった私も、これはチャンス!と遅ればせながらブームに乗ろうと、先ずは基本からと思い、色々と古典落語を聞いている。が、何分粗忽者なので、かなり邪道な聞き方なのであろうと思う。

 落語の進行はオープニングで三味線や太鼓の出囃子で始まるが、これがまたハードロック、プログレっぽいのもあり、往時のクリムゾンを彷彿とさせて心地良い。そして落語家が高座に登場し、マクラの話で観客の興味・関心を高めていく。そして本題に入っていくが、やはり話し方・伝え方というのは大事だなあと思うのが、私のような素人は、単純に面白いか否かで感覚的に聞いており、名人と呼ばれるような第一人者であっても、「メリハリ・盛り上がりがない」「グダグダ感が続く」「何を言っているのか分からない」となると、...つまらんなぁ(失礼)となり、数分で飽きてしまい、即座にとばしてしまう。
 話のネタとしては、人情噺(芝浜なんかが有名ですね。)、怪談噺、艶噺(コラムでは相応しくないので略)などと様々なジャンルがあるが、初心者の私は王道のお笑い系の滑稽噺を好んで聞いている。メジャーな作品(噺)が多々あるので、思いつくままに色々と試して聞いているが、もう一つ大事だなあと思うのが、やはりストーリー仕立て、脚本・シナリオの全体構成である。どんなに上手く話されても、中身のストーリーがイマイチだとやはりすぐ飽きる。登場人物がいきいきとその個性を発揮し、全体的にドラマティックな起伏のある話は聞いていて飽きない。
 そして最後にサゲ(オチ)となる。上手な構成であると、冒頭のマクラの話が伏線になっていることもあり、ここでこう繋がってくるか!なるほど上手い!と感心していると、観客の拍手でフェードアウトしていく。

 さて、ただの個人的な趣味なのであるが、ふと職業病的に振り返ってしまうと、「研修も同じじゃないの?」と。
 冒頭のマクラは、業界用語で言うアイスブレイク。やはり先ずは話を聞く気にさせる雰囲気を作るのが大事。メリハリや間の取り方といった分かりやすい話し方・伝え方など、聞き手の興味・関心を持続させる技術が大事。さらに内容については全体構成(カリキュラム)がこれまた大事。色々な登場人物が銘々考えを言いあい(グループワーク?)、全体が進行していく。最後のサゲは、いわば「まとめ」。これまでの話のポイントを一言で振り返り、おまけに最後は講師への拍手で御礼...などと考えてしまう。     
 研修題材としても、「二番煎じ」という噺などは、公務員としての監督業務の心得、職務専念義務違反・贈収賄のケーススタディなど、公務員のコンプライアンスとは何かまで考えさせる名作だなぁ。などと勝手に思っている。(公僕的視点から大雑把に要約すると、当時の公務員(お役人)が公務中にも関わらず、自主防災組織の住民と一緒に(半ば強要し)酒盛りを楽しむという話。興味があれば聞いてみてください。)
    
 多くの落語ファンは、このような無粋なことは考えないのでしょうが。
    
 惜しいかな、洒落の分からぬ男にて
    
     


※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません。