2017.4.28
  「『まち歩き』で、まちおこし」

                                総括支援アドバイザー兼教授 吉岡 正彦


 この半年間に、仕事で、大分県別府市と隣接する日出(ひじ)町、そして福島県会津若松市の3か所で、「まち歩き」を体験した。別府については、2017年2月、このコラム欄で「別府温泉の開発から学ぶ地域振興」を書いたが、今回は、「まち歩き」の魅力を中心に書いてみたい。
 ありていに言えば、市街地などを歩けば、まち歩きではある。その目的は健康づくりや気分転換など、多様であろう。それはそれで楽しいのだが、近年、観光面を中心にまちおこしの手段として、「まち歩き」が盛んになっている。
 本稿では、少し拡大解釈して、歩くことのみでなく、各地域ならではのさまざまな体験(アクティビティ)も、「まち歩き」に含めている。詳しくは、以下に紹介したい。

 日常的なまち歩きとの違いをわかりやすく列記してみると、
 ・目的がまちおこし、まちづくり(地域振興)である
 ・地元に詳しい案内人(ガイド)が付き、解説を聞くことで新たな発見がある
 ・より積極的には、ふだん見られない場所や地元の文化、料理などを体験することで、非日常的な感動を味わう
あたりを挙げることができるのではないか。
 参加者は観光客でも地元の住人でも良いが、一方、案内人は地元のおばちゃんなど、ボランティアの方が最適だ。地元の方が案内することで、たまたま出会った住民と挨拶や雑談する機会ができたり、この店は安くておいしくてお買い得などと、ありのままの地域情報が得られる楽しさがあるからだ。

 簡単に言えば、NHK総合テレビの人気番組「ブラタモリ」を、イメージしてもらうとわかりやすい。
 「ブラタモリ」では、全国の都市や地域を、タレントのタモリさんとNHKの若手女子アナウンサーが“ブラブラ”歩きながら、あまり知られていない地域の歴史や人々の暮らしを紹介する。そこには、毎回、当該地域に詳しい先生や専門家が登場して、さまざまな視点からの解説があり、新たな魅力や歴史・文化などを再発見する様子を楽しむことができる。
 本稿でいう「まち歩き」は、「ブラタモリ」と同じような体験を、一般人が地元の案内人とともに楽しむ観光的なイベント(アクティビティ)、と表現すれば、わかりやすいかもしれない。

 別府の「まち歩き」では、別府駅周辺の周遊コースを体験した。別府市観光協会が主催して、定期的に地域事情に詳しいガイドによる「別府てんてくガイドウォーク」というイベントが開催されている。参加費は1人1,000円だ(団体によるガイドの貸し切りもあり、参加費は同じ)。
 それは、JR別府駅前からメインストリートである駅前通り、やよい天狗通りを経由して、別府温泉の発祥地である竹瓦温泉を見学し、さらに梅園通り、別府駅市場などを見てまわる、1~2時間の周遊コースである。
 具体的には、商店街や市場、温泉(建物)、アーケード街、休憩所などをめぐるわけだが、ここでひと工夫されているのは、駅の観光案内所などで周遊コースが掲載されている「食べあるき・まちあるきマップ」を500円で買うと、100円のチケット5枚が付いており、コース上にある参加店で、ちょっとした商品と交換することができる。また、ルート上にある2か所の温泉は、無料で入浴できる特典もついている。
 商店や飲食店、土産物屋など27店舗が参加しており、筆者の場合はガイドさんとともに散策しながら、ジャンボいなり寿司、ワンカップ焼酎、ゆずまんじゅうなどと交換した。観光客としては、地元ならではの商品の食べ歩きが楽しめ、他方、店舗や商店街にとっては、売り上げやにぎわいづくりにつながる効果が期待できる。

 こうして周遊することで、参加者は、およそ別府の中心市街地の全体を知ることができる。そしてその後に、あらためて興味を持った料理店や飲み屋に立ち寄ったり、あるいは竹瓦温泉に入浴したり、目ぼしを付けた店で土産物を買ったりと、効率よく別府のまち体験ができることになる。(詳しくは、文末に表記した「別府てんてくガイドウォーク」ホームページを参照されたい)

まち歩き「別府てんてく」のガイドさん。「別府てんてく」参加店では、チケットで土産品がもらえる
コース路上には行き先が案内表示されている コース上にある別府温泉発祥地の竹瓦温泉

また、日出町では、地元のボランティア・ガイドの方にお世話になり、二の丸館という観光案内所を出発点として、日出城址周辺を約1時間かけて「まち歩き」した。
 日出城の本丸は現在はないが、鬼門櫓と呼ばれる2階建ての櫓が復元されており、そのなかには歴史的史料などが展示されている。
 そして、近くの海岸沿いでは、戦国時代に日本にキリスト教を初めて伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエルが大分に向けて就航した港があった、などの解説を聞くことで、その時代にタイムスリップしたような気分を味わうことができた。
 あるいは、全国的にも美味として知られている「城下かれい」は、日出城の下にある海岸近くで採れたかれい(マコかれい)なので、そのように呼ばれるようになったなどのウンチクを聞くと、「へえー、そうなんだ」と感心したりもした。
 さらに、城址近くにある歴史的な和風建築(国指定重要文化財)である的山荘(てきざんそう)からは、眼下に別府湾や市街地を一望することができ、あたかも日出城主になったような楽しさが体験できた。

周囲の景観に合わせてつくられた観光案内所 復元された鬼門櫓
鬼門櫓内部でガイドさんの説明を聞く 的山荘の庭園から別府湾を望む

そして、会津若松市でも、七日町通りまちなみ協議会の役員による案内で、七日町通りを中心に「まち歩き」を体験した。
 これまでは、七日町通り沿いに建っている歴史的建造物をながめたり、商店、土産物屋などをひやかす程度の観光であったが、ガイドをしていただきながら一つひとつの建物の歴史、由来、特長などの説明を聞くと、まったく違った建物やまち並みに見えてくるのが不思議だ。
 また、表通りだけでなく、外部者では気がつかないような横道に入って、路地歩きを楽しんだり、以前、病院だった建物をリニューアルして、現在はテナントショップとして再利用している様子などを知り、観光地づくりの工夫や苦労などの理解を深めることができた。

電線地中化が進む七日町通り 昭和初期に銀行として建てられた歴史的建物
脇道にあるいわれを持つめぐりあい観音堂 病院建物をテナントショップとして再開発

以上のように紹介すると、「まち歩き」は、観光施設や資源に恵まれた特別な地域や場所だからできること、と感じるかもしれないが、こうして体験することで、じつは、どんな地域や場所でも展開できる手法であると実感した。
 たとえば、日出町では、ある移住者(若い女性)が農園を借りて、ゆずや野菜、柿渋などを生産しているのだが、こんな日常生活の一部を「農園で楽しむ柿渋づくりと野菜たっぷりのランチ」などとして商品化して、参加者を募集している(参加費は大人2,500円)
 筆者もこのイベントに参加するチャンスがあり、自然豊かな農園のなかでゆずと蜂蜜の特製ジュースをつくったり、野菜たっぷりのカレーやスープ、デザートのキッシュをおなかいっぱい食べて、とても豊かな時間を過ごすことができた。
 日出町では、このほかにも町の皆さんがそれぞれに工夫をして、お寺で写経の会(参加費1,000円)、ぶらり城址で川柳づくりの散歩(同500円)、などの楽しいイベントが、いろいろと用意されている。これらをパンフレットにまとめて、参加者を募集している。こんな試みは、誰でもが気軽るにできるまちおこし、まちづくりといえるのではないか。

 まちおこしというと、著名な観光地や観光資源が不可欠と思ったり、大げさな組織やまとまった資金が必要と考えがちである。
 しかし、著名な観光地めぐりに飽和感を感じる現代、あるいは東日本大震災や熊本地震を経験して、地に足が付いたありのままの生活の豊かさを再認識した現代ならではのまちおこしツールとして、このような身近な地域資源を生かした「まち歩き」づくりを提案したい。きっと外国人観光客にも、喜んでもらえるに違いない。
 筆者も、今回、紹介したまちや場所を、なにげない豊饒な時間(とき)を味わうために、次回はふらりと訪ねてみたいと思っている。

参考文献
  「別府てんてくガイドウォーク」
http://www.openbeppu.sakura.ne.jp/tenteku/
 ひじはく(日出町観光協会ホームページ)
http://hijinavi.com/hijihaku/
 七日町通りまちなみ協議会ホームページ
http://nanuka-machi.jp/


※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません