2017.6.1
  「平田村のかかしコンクール」

                                総括支援アドバイザー兼教授 吉岡 正彦


  2017年5月から、福島県平田村の公共交通に関する協議に係わらせていただいている。平田村は郡山市や須賀川市といわき市の間に位置しているが、鉄道が通っていない丘陵地域にあることもあり、これまで訪れる機会がなかった。
  しかし、数回ほど足を運んだだけなのだが、なにか楽しい雰囲気を感じている。それは、農地や山林を中心としたのどかな農村的な雰囲気もあるだろうが、ちょうど「ジュピアランドひらた」で、ほぼ満開の芝桜を観る機会に恵まれたせいかもしれない。

  東北百名山(日本百低山でもある)の一つに数えられている蓬田岳のふもとにある「ジュピアランドひらた」には、約1.7ヘクタールの敷地におよそ20万株の芝桜が植えられている。毎年、楽しみにして観にくる方も少なくないと思うが、2017年は4月22日から5月14日の間、芝桜まつりが開催された。
 筆者は、たまたまほぼ満開の時期に訪れることができ、ピンク、紫、白などに植え分けられて、広大にひろがる芝桜を楽しむチャンスに恵まれた。写真にあるような色とりどりの芝桜により描かれた花のじゅうたんのような美しさに加えて、風に乗ってほのかにただよう香りも感じられて、ずいぶんと癒やされた。

 

 広大な芝桜の美しさに加えて、じつは筆者が興味を持ったのは、同時に開催されていた「かかしコンクール」だ。
 かかしといっても、最近はあまり見なくなったが、鳥などを追い払うために農地のなかに麦わら帽子や古着を着て立つ竹製の人形のような、簡単なつくりではない。人物から動物、人気キャラクターさらには怪獣などの形をしたさまざまなかかしが、何十体と並べられ披露されている。時間をかけて細かな手が加えられており、じつに良くできているのだ。
 しかも今年は、はじめて市町村対抗のコンクールを開催したとのことで、平田村の近隣に位置している石川町、古殿町、楢葉町、川内村、そして遠くは宮城県丸森町などからも出品されていて、地域的な広がりが感じられた。もちろん、これら自治体ばかりでなく、地元の子どもたちや町内会、近隣地域からの一般参加者らによりつくられた作品が多数あり、まったく楽しい。

 聞くところによると、平田村の澤村和明村長がかかしづくりの名人とのことで、これまで数え切れないほどの作品を作り、JR郡山駅構内などにも展示された経歴をもっているらしい。まさに、トップのリーダシップによる、むらおこしの様相を呈しているという訳のようだ。
 こうした近隣自治体のやる気や協力姿勢を考慮すると、将来的には、きっと阿武隈高地一帯に広がる一大地域おこしイベントとして、おおいに賑わいそうな予感を覚えた。     

 かかしによる地域おこしに可能性を感じて、インターネットで関連情報を検索したところ、全国各地で、かかしづくりやコンクールなどが行われていることがわかった。さらに、これらのネット情報をサーフィンしていたら、いろいろなアイデアが浮かんできた。

 まずは、かかしの利用可能性として、擬似的な人口確保対策にも応用できそうだ。昨今、多くの自治体で人口減少が進み、大きな問題になっているが、奥播磨かかしの里(兵庫県姫路市)や三次市東祖谷名頃地区(徳島県)では、集落内に多数あるかかしを、「かかし人口」として住民登録している。
 加えて、奥播磨かかしの里では里親制度として、かかしの展示協力者を広く募集しており、交流人口の確保策としても役立っているようだ。実際、京都、大阪などの大都市にも貸し出されているようで、それなりの活発な応募があるようだ。(注)
   
 また、上記した2事例のほか、鳥取県八頭町や福岡県久山町などの地域では、かかしを集落全体が展示場とばかりに、各所に分散して展示しており、地域のにぎわいづくりや観光開発にも役立てている。予想もしないような場所に、ユニークなかかし、驚くようなかかしなどが展示されていたら、きっとハイキングや散策なども楽しくなるに違いない。
 あるいは、そこまでは期待しなくても、とくに過疎的な地域の場合、道ばたや家屋の前などに、農夫や手をつないだ学生の姿をしたかかしが立っていることで、家族や地域住民が増えたようにも感じるのではないか。そんなことで、日常的な生活が楽しくなったり、気持ちが落ち着いたり、という効果も期待できそうだ。
 そう考えると、オリエンテーリングや宝探しならぬ「かかし探し」のような、屋外ゲームとしても活用できそうだ。加えて、スタンプ・ラリーを活用して、各地に立っている全てのかかしを巡ってスタンプを集めたら、コンプリート(完全制覇)記念の景品として、地元特産品の割引や農泊・民泊を抽選プレゼント、などとやっても面白そうだ。
   
 さらに、かかしならではの利用可能性として、人間が挑戦しにくい危険な場所や不可能な場所へも設置できるという魅力があるのではないか。たとえば、険しい崖につるして驚かせたり、水中に固定して海水浴客やダイバーを迎えるなど、人間では不可能というような活用のしかたも、いろいろと考えられそうだ。
 このような演出により、奇想天外な風景や映像効果が得られて、観光客らによりインスタグラムなどに投稿されて、地域が話題になりそうな可能性も感じた。
   
 あるいは、似たもの同士の集合効果として、紙粘土や布、綿、ビニール、草花などを利用した張り子細工やみこし、人形、歌舞伎などとの共演も、面白そうだ。たとえば、二本松の菊人形まつりや郡山のデコ屋敷で作られている張り子作品、あるいは檜枝岐の歌舞伎などとのコラボによる、イベントなどを開催してはどうだろうか。新しい地域間ネットワークができるとともに、マンネリ化を打破するリフレッシュ効果なども期待できるかもしれない。
 そういえば、ヨーロッパのどこかの都市を訪れたときに、夜の祭り広場で、蛍光塗料を塗ったり、蛍光ライトを取り付けた何体かの黒い等身大の人形が、あたかもガイコツ(光る人体の骨格)が踊っているように操られて、会場を盛り上げていた光景を思い出した。そのシーンを見たとき、細い木の骨組みの上に黒い布やビニールを巻き付けたような外観だったので、かかしを連想したのだった。つまり、黒子役が頭上に掲げながら操る「動くかかし」を開発しても、面白いのではないか。
 さらには、VR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)技術を利用した仮想のかかしを開発すれば、映像のなかで飛び跳ねたり、笑ったり怒ったりと、活用可能性はさらに大きく広がりそうだ。
   
 このようにいろいろとアイデアは膨らむが、同時に活用ルールも必要となろう。たとえば、さまざまな場所にかかしを立たせた場合のリスクとして、夜間の道ばたに立つかかし人形が車のヘッドライトに照らし出された瞬間などは、ドライバーは思わずギョッとして、運転に支障が出るかもしれない。
 あるいは、かかし人形をバス停のそばに展示したら、バスの運転手から利用客と間違えるので撤去して欲しいとの要請があったという、笑えないような話もあるようだ。そのような弊害の発生可能性に対しては、十分な配慮が必要だろう。
   
 こうして考えてみると、かかしを活用した地域おこしの可能性は、かなり広がっているのではないか。平田村に限らないが、かかしの積極的な活用に取り組んでみてはいかがだろうか。

かかし祭りとかかしコンクール展示の様子。右下の農夫の作品は澤村村長作


  PS.
  このコラムを書き終えたとき、ちょうどNHKテレビの番組「あさイチ」(2017年5月25日放映)で、徳島県三好市の特集があり、名頃集落のかかしの里が取り上げられた。番組では、道路わきの木の上に工事人らしきかかしが座っていたり、空き校舎の教室のなかには何十体もの授業中のかかし児童が展示されており、驚いた。
  また、かかし基本台帳には100人(体)以上が登録され、集落の人の協力により、顔写真に加え、名前、推定年齢、誕生日、性格などが記入されていた。さらに、かかしの集団なかに麦わら帽子をかぶったレポーターが紛れ込んで、本人を当てるクイズ風の遊びもあり、さらに興味がわいた。

(注)かかしの人口・基本台帳、里親制度
奥播磨かかしの里 - ふるさとかかしネットワーク
http://www.furusato-kakashi.net/index.php

天空の村・かかしの里(徳島県三好市名頃(なごろ)集落)
http://miyoshicity-kankokyokai.or.jp/nature/tenku_kakashi

その他の参考資料:
ふるさとかかし(鳥取県八頭町)
http://www.town.yazu.tottori.jp/2133.htm

かかし(案山子)村(福岡県久山町上久原地区)
http://www.town.hisayama.fukuoka.jp/infos/detail/57

かみのやま温泉 全国かかし祭(山形県上山市)
http://kaminoyama-spa.com/tourism/data/000568.php

中田かかし祭(富山県高岡市中田)
http://www.info-toyama.com/event/20051/


※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を 示すものではありません