2019.01.30
  「地方創生の成功モデル・Legare Koori(レガーレこおり)」

                     総括支援アドバイザー 兼 教授  吉 岡  正 彦


 
ここ数年、福島県桑折(こおり)町の総合計画づくりやその進捗管理のお手伝いをしている。そんな関係で、最近、町内を視察させていただく機会があった。
 桑折町は福島県北部に位置し、人口は約1万2千人。江戸時代には関東と東北地方を結ぶ奥州・羽州街道の宿場町として発達した。町名からも分かるように明治時代には伊達郡役所が置かれており、この建物は現在も旧伊達郡役所として国有形文化財指定を受けて保存・活用されている。  観光名所としては旧郡役所のほか、五代友厚が開発した日本三大鉱山の一つと数えられた半田銀山やハート形をした半田沼を擁する半田山自然公園、そして戦国時代には伊達氏が居城した桑折西山城跡(国指定史跡)などがある。
 加えて桃の産地として知られており、1994年から連続して皇室に「あかつき」を献上していることから、「献上桃の郷」として商標登録が認められている。また、リンゴ、あんぽ柿や野菜産地などとしても知られており、農業が盛んである。

 そんな地域の特長を生かして、2018年4月24日、廃止された町立幼稚園の建物をリニューアルし、食と農をつなぐさまざまな取り組みを行うLegare Koori(レガーレこおり)が完成した。レガーレとは、イタリア語でつなぐ、つながるという意味である。同時に四季の食材を使用した本格的なピザが食べられるレストランPizzaSta(ピザスタ)がオープンした。
 そのニュースは新聞やネット情報などで取り上げられ気になっていたのだが、今回、やっとピザスタでランチを食べる機会にめぐまれた。昼食時にはランチセット・メニューがあり、千円でピザ、サラダ、ドリンク、デザートのセットを楽しむことができた。
 ピザは新鮮な地元野菜や果物などが使われて、店内のほぼ中央にある本格的なピザ窯で職人が焼き上げており、サクサクとした食感がありおいしかった。大都市の専門レストランにも負けない出来だと感じた。
 デザートも地元の「あかつき」を利用したシャーベットである「至福の桃ソルベ」を味わうことが出来、さっぱりした桃の甘みが感じられて満足した。桃を利用した6次産業化(桃の生産に加えて加工商品を開発・販売している)にもチャレンジしていることがわかり感心した。
 ちなみに、「至福の桃ソルベ」は、食の全国イベントである「FOODEX美食女子グランプリ」のスイーツ部門で金賞を受賞したり、「おもてなしセレクション(OMOTENASHI Selection)2018」において、外国人選定員による特別賞を受賞している。 (注)

 また、店内には絵本や落書きコーナーがあったり、園庭を再利用した芝生広場があり、子どもを遊ばせながら大人たちもゆっくりとした食事がしやすい。園舎のリニューアルならではのメリットを生かしていると感じた。
 あるいは、幼稚園で使われていた大きな黒板が広告宣伝ボードとしても再利用されており、色とりどりのチョークで書かれたディスプレイも、店の雰囲気にステキに調和していた。(下記、写真参照)
  開店から約半年の2018年10月には来客数が2万人を超えたとのことで、これは単純計算で一日平均130人程度の来客数となることから、なかなかの繁盛と言ってよいだろう。筆者が食事した当日も遠隔地からの車も駐車して、若い女性や子どもたちらでにぎわっており、店の入口には空席待ち客が並んでいるほどであった。

 その運営はどうなっているのだろうと興味を持ち聞いてみたら、町から一般財団法人桑折町振興公社が受託して直営しているとのこと。しかも6月~11月の最終日曜日にはマルシェ(農産物市場)を開催して、地元の採れたての農作物を販売したり、冬季にはイルミネーションによるライトアップをしたりして集客に工夫している。
 さらに、ピザづくり体験教室などさまざまなイベントを開催しており、民間企業感覚を取り入れて、ずいぶんと頑張っていると感じた。
 なお、建設(改修)にあたっては、国の「地方創生拠点整備交付金」が活用されており、このため正式名称は「桑折町農業振興活動拠点施設Legare Koori(レガーレこおり)」である。その意味では、全国で取り組まれている数ある地方創生事業のなかでも、成功事例と言っても良いのではないか。

 全国的に多くの自治体で人口減少傾向が続くなか、桑折町は人口の社会動態(転入と転出)ではほぼ均衡しており、人口推移は2015年に策定した人口ビジョンの予測値を上回っている。こんなマルシェやさまざまなイベント開催、あるいはママ友が集えるようなレストランを開発する町全体の元気さが、移住人口や交流人口の増加につながっているのではないかと感じた。
   









(撮影筆者)

(注)Foodex 美食女子スタイル(2018年まではFoodex 美食女子グランプリ)
https://foodex-beauty.jp/menu/592308/
OMOTENASHI Selection 特別賞
https://omotenashinippon.jp/prize/news/6329/

参考資料
レガーレこおり/ピザスタ
https://www.town.koori.fukushima.jp/kurashi/service/map/koorifacilities/5754.html https:///pizzasta.jp/

※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解
を示すものではありません