2019.02.06
  「ドーナツ屋さんと私」

                                   教務部 森澤 祐子


 
自治研修センターに通うようになって、何回か娘にお願いされたことがある。「帰りにドーナツ買ってきて」と。駅前などによくある、あのドーナツ屋さんのことである。

 そのドーナツ屋さんの私の一番古い記憶は、4、5歳の頃だろうか。母が漕ぐ自転車の後ろの座席に乗って、買い物の帰りに二人で行くのが楽しみだった。注文は必ずシュガーレイズド(砂糖がらめのふわふわドーナツ)とホットチョコレート(ココア)。当時は珍しくもないが祖父母と3世代で暮らしており常に周りには誰かがいる状態であったため、母と二人きりで誰にも邪魔をされないお出かけはとてもうれしかった。  

 今では沢山の種類もあり、あまり買うことのなくなったシュガーレイズドだけれど、たまに食べたくなるドーナツである。

 話が逸れてしまうが、この話を何年か前に友人に話したところ「わたしにも、そういうのあるある。」と言って教えてくれた。彼女は「お母さんと二人で買い物に行って、最後にデパートで食べるソフトクリーム」が大好きだったそうだ。
 彼女にはお姉さんもおり、お母さんを独り占めできる大切な時間だったのかなと思う。

 次の記憶は学生の時。友人と学校帰りに行っては何時間でも話していた(今でこそ、色々なコーヒーショップがあるけれど、当時は無かった。)。
  東京に遊びに行き、歩き回って足が棒のようになった時の休憩は大抵そのドーナツ屋さんだった(全国に店舗があって、値段も分かっているから安心。)。
  格好つけて席で勉強をしたことがあるけれど、結局早々に切り上げて読書の時間になっていたような気がする(他の人がやっているのを見ると、格好良く見えるんだけどな・・・。)。
 飲み会の帰りにお土産でドーナツを買って、次の日の朝ごはんになることもあった(でも次の日になるとパサパサしておいしさは半減している。)。

 大人になってからは行くことが減ったドーナツ屋さんだが、何年か前から娘と私で、私と母のように買い物のついでに二人で行くことがある。娘は大抵ダブルチョコレート(ココア生地にチョコがけ)とキッズドリンク、私はその日の気分でドーナツを選びコーヒーかカフェオレを頼む。  周りはがやがやとしており決して落ち着いた場所ではないが、家ではない場所での娘と二人だけの時間がとてもいとおしく感じる。恥ずかしくて聞けないけれど、母も同じような気持ちであったのだろうか。

 いつまで私と一緒に来てくれるかな?そのうち、「友だちと行ってきたから。はいお土産。」なんて言われる様になるんだろうな。と楽しさの中に少し寂しさも感じつつ、娘が大人になったら「お母さんとドーナツ食べに来たな~」なんて思ってくれるかしら?と期待し始めた今日この頃です。

 さて、今日はドーナツを買って帰りましょうか。

 ※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修 センターの公式
  見解を示すものではありません。